[携帯モード] [URL送信]

BL小説
蛍籠 #2
和成が利香に一目惚れってやつをした。
俺の双子の姉に。
俺は和成を応援すべきなんだろう。
でも胸の奥でつかえてるこのモヤモヤは何だ?
いいじゃないか、和成と利香が付き合っても。
俺達は友達のままなんだから。
親友であることに変わりはないんだから。
仲良いままだったらいいじゃないか。
今まで通りやっていけたら

いいじゃないか。



昨日の日曜俺の家で和成とゲームをした。
俺はすごく楽しみにしていたんだ、でも、全然楽しくなかった。
隣で一緒にゲームしてんのに、和成は遠くにいるみたいで。
利香が俺の部屋にお菓子とか持ってくると、和成はまた隣に戻ってくるんだ。
でもその時は利香と話してて、利香がいなくなったらまた遠くに行ってしまう。
もっと話とかもしたかったのに、そんなで和成は夕方になると帰ってしまった。
ゲームは俺の勝ちで、ジュース賭けてて圧勝だったのにちっともつまらなくて。


「昨日のゲームさぁ」
「…………」
「…和成?」
「え、あ、うん、何だっけ?」

学校でも上の空だ。
もういいよ、そう言って俺は和成から目線を外した。
なんか悲しくなってくる。
親友はほったらかしですか。
でも気になってしまう。も一度和成を見上げると、和成も俺を見ていた。

「…和成?」
「……り…」
「へ?なんて?」
「…りか」

俺を見て、親友の俺を見て、一番聞きたくない名前で和成は呼んだ。

「…利香じゃないよ、俺利津だよ」
「…そうだよな、ごめんごめん、でも本当そっくりだな」


親に言われてもいいよ友達に言われてもいいよ、でも


お前にだけは言われたくなかった。


和成だけには。どうして?
親友だから。本当に?
だって親友じゃなかったら何なんだよ。
親友って思ってるの?
親友だよ!俺達は!だって、だって…



「利津っ!」

気付いたら和成に両肩をつかまれてガクガク揺すられていた。

「あ、れ、俺…」
「ちゃんと返事くらいしてくれよな〜、焦ったじゃんかよ…」
「…そう言う和成だって…」
「利津?」
「そう言う和成だって、昨日からずっと上の空で、俺の話全然聞いてないじゃないか!」

いつの間にか怒鳴っていた。
正直自分でもびっくりしている。
だって和成とケンカしたことなんてなかったし、
最近怒るってことをしなくなっていたから、
自分の口から荒っぽい大声が出るなんて思ってもみなかった。

それに

和成だってびっくりしてんだろうな。
急に俺が怒りだして。



「…り」
「もういいよ!!和成なんか知らない!!!」

本当は隣で話していたいのに、本当は行きたくないのに、足が勝手に和成から遠ざかる方向へ向かって走りだしていた。

いやだいやだいやだ

一緒にいたいのに

やめてやめてやめてやめて


足が

何で自分の言うこと聞いてくれないの?

悲しい








足元がガクンとなった

グラウンドに降りる階段に気付かず足を踏み出していたようだ

バランスが崩れる

このまま頭でも打って死んじゃったらいいのに

ゴンと音がした

でも俺の頭に衝撃はなかった

背中に誰かの気配がある

後ろを振り向いた

階段に頭をぶつけてうなだれている和成の姿がそこにあった




「和成…!」





保健室のベッドに運ばれた和成は、イタタと頭をさすりながら横になっている。

「ただのうちみだと思うけど、一応担任の先生に言ってくるわ」

保健の先生はそう言うと保健室から出て行ってしまった。
ピシャンというドアの閉まる音とともに部屋に気まずい沈黙が流れる。

「…あの…和成、ごめん」
「いいって、それよりこっちこそ…ごめん」
「分かって謝ってんの?」
「俺がちゃんとお前の話きかなかったからだろ?」
「………違うよ」

和成が目を丸くする。
やっぱり分かってなかったのか、違うんだよ和成。
俺が怒ってんのはそんなんじゃないんだ。

俺は…


「…ばっかだなー!和成、俺が本気で怒ったと思ったのか?」
「……へ?」
「俺がお前に怒るはずないだろー?ただボーっとしすぎてたから喝入れてやろうと思って」
「…本当に?本当に怒ってないのか!?」
「本当!…だって」

親友だろ?





そう言うと和成は安心したようにほっと笑顔を見せた。


ああ、分かってしまった。
俺は和成が…

…好きなんだ。




モヤモヤが晴れていくのと同時に、不安が膨らんでいくのが分かった。

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!