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小説
y序2
扉が開けられた。

自分と同い年だと聞かされていたそいつは、思っていたより普通で、

黒髪の自分と比べて茶髪で薄い色素の髪とか、
女子に友達扱いで可愛がられそうな顔立ちとか、
座っているので詳しくは分からないが、自分より10センチは低いであろう身長とか、

分かったことはたくさんあった、が、話を切り出すには微妙な話題ばかりで。

そんなことを考えていると母に座るよう促され、用意された座椅子に座る。

親同士はもう会話が弾み始めている。俺も今こいつと会話しないとタイミングを逃しっぱなしで、きっと食事が終わるまで気まずい雰囲気が流れることになるだろう。

もう一度話題になりそうなものがないか目を動かせると、目の前に座ったそいつの制服に目がとまった。
ベージュの制服にブルーのネクタイ、よく見かけるブレザーの制服だった。

「青葉学院なんだ?」
「ん?うん、そ。そっちの学ランは…高明高校か」
「そう。バス通?」
「うん、俺南商店街前で降りるんだけど、高明だったらどの辺?」
「南商店の2つ後の高津で降りる。」
「あぁ、あそこか〜!じゃあもしかしたら朝一緒だったことあったかもね。」


話してみると案外いい奴で話しやすい。
義兄弟がグレてたらどうしようと思っていたが、その心配はなさそうだ。

「俺佐藤竜也、えっと…横塚…」
「横塚浩仁、まぁ苗字は関係ないか、同じになるんだし」

横塚浩仁はふははと笑って答えた。
そういえばそうか、親同士が結婚するんだもんな、苗字はどちらかになる。
そこのところはどうなっているのか母に聞こうと思って横を向くと、まだ旦那(仮)と話している。
しかも二人とも息子達のことなんか眼中に無い。

食事が運ばれて来たので、横塚浩仁に目配せして、親を放っておいて二人で先に食べはじめた。

隣できゃわきゃわ話されるとなんと言うか、居場所が無い。


「それで…母さん達結婚してもいい?!」

それで、って、繋がる話題なんて無かったように思うが。しかしここで駄目だと言う理由も無いし、俺達息子はもうそのつもりでいたのだから、ちょっと驚いた。

「いいよ、なぁ?」

俺は横塚浩仁に意見を求めるように顔を合わせる。

「うん、構わないよ」

息子達の同意を聞いて、両親は安心したように胸を撫で下ろしたようだった。

「本当!?ありがとう!」
「これからよろしくね」

お礼やら挨拶やら各自に言われ、返事したのやらどうやら分からなくなった。

その後は食べながらこれからの事を決めたり、自己紹介をしたりで時間が潰れた。


苗字は横塚に決まった。
昔から日本は父親の苗字を名乗る名残がある。それに便乗したのだ。
住む家は俺ん家、もとい元佐藤家の家。
バス停が近い方にしよう、と言ったらこうなった。

どんどん本当の家族になる準備が整って行く。

これから楽しくなるだろう。
ただ気がかりなのは、親達と話し始めてから横塚浩仁と全く話をしなかったことだった。

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