--03 「仲が悪くは、ない」 うどんが細めで、よいと思った。 太いうどんだと、モチモチを通り越しべたべたとしている場合がある。あの食感がいただけない。 息を吹きかけ冷まし、うどんをちゅるんと啜った。 「ダチなんじゃねえの?」 「一応。だから、血が繋がっていると言っているだろう」 「………悪い」 「謝るな」 鶏肉を前歯で裂きながら、謝られると余計にやりにくいな、と思った。 「似てないよな」 「ん?」 「僕と、市川が」 「似てるだろ」 「どこが」 「顔」 「………」 ぽろり、と鶏のささみが口から落ちて、お椀にダイブした。 「眼鏡外したら似てる」 そういえば四月、似たようなことを晴一にも、西園寺会長にも言われたような気がする。 今度から眼鏡は外せないな、と思った。髪色が異なるため他人の空似でかわすことは出来るが、わざわざ見せつける必要もないだろう。 うどんを箸で掴むと、舞う湯気が皮膚に温かい。 「やはり似てないな」 意図せず口から零れる言葉。 「ん?」 「味」 「あー………」 うどんの汁を飲むと、宣之さんの作るものより、少し薄味だなと思った。 晴一が苦笑するものだから、 「僕はお前の方が好きだ」 フォローのつもりはないが、一応慰めてやることにした。 というか、元来薄味の方が好きなので、実際こちらの方が僕の味覚には合っている。そこまで褒め千切る義理もないので、そこは伏せておくことにしたが。 しかし、せっかくこの僕が優しくしてやったというのに、反応がない。 何となく腹が立ったので隣に座る晴一を睨んでやろうとすると、 「…………」 口元を押さえて照れているような仕草をしていたので、困った。 [←][→] [戻る] |