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「ほら、これ」
薄い黄緑の付箋を捲り、ページを開いたそれを渡された。
分厚い冊子。背表紙を見ると、「古賀学園生徒会 活動記録」と書いてある。パラパラと捲ると、四月から三月まで、一年分の行事が写真や文で記録されていた。年号も書かれているから、毎年作っているものなのかもしれない。これは、十年近くも前のものだ。紙の表面がところどころ黄ばんでしまっている。
「その年以降、学園祭はやってないってよ。それが今のところ一番最後の学園祭だ」
司に言われて、再び付箋のページを開く。
古賀学園、学園祭。
確かにそこには学園祭の記録がある。十年前からやってないなんて、勿体ない。ていうか、今まで誰か提案しなかったのか。
「………あれ」
ふと手が止まった。
白黒の写真の中で、一枚に視線が引き寄せられる。
派手に飾り付けられた教室の前。二人の生徒が肩を組んでいる。
一人は肩まで伸ばした髪の毛先を跳ねさせ、もう一人は少し地味な眼鏡を掛けている。二人とも楽しそうに笑っている。写真の下には、生徒の名前が書かれていた。
「新名………?」
「いつまで見てんだ」
「あ」
ひょい、と頭上から冊子を奪われた。
「まだ見てんだよ!」
「そんな暇あるなら手伝え。二日前だっつーのに終わんねぇ」
「………うっ」
紫も一人で行けっつーの、と司はジェンガのてっぺんに冊子を積み上げる。見上げれば首が痛くなるほどの高さにあるそれは、俺の身長だと届かない。くそ、まだまだ成長してやる。
「実行委員の当日の動きと、全体のスケジュール。これコピー取ってホチキスで留めて」
「………はぁい」
ばさりと紙の山を空いた手に積まれ、俺は渋々コピー機へと向かった。機械に紙を挟んで、印刷ボタンを押す。静かな起動音と同時に、印刷された紙が次々と吐き出される。
あの写真がまだ、引っ掛かって離れない。
あの人、木崎に似てた。
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