--02 環先輩が、いつの間にかソファから立ち上がってモニターを見ていた。 「お前のそういう発言、ムカつくんだけど。早く話してよ」 「嘘って……何がだ?」 「気付かないのか? 下らない、僕はすぐに分かったぞ!」 環先輩は胸を張ってそう言うと、モニタリング室から出ていった。 遠くから、迎賓室の扉が閉まる音がした。 「あいつは何かを掴んでいても話そうとしない」 チカ先輩は苛立たしげに眉を寄せた。 環先輩はモニターを観ていただけだ。つまり、鍵はこの中にある。 見回り、物音、空の金庫。テスト用紙、睡眠、刷り込み、盗難。 電話。故障。ダイヤル。欠伸。 「あ」 まさか、いや、しかし。 「何か分かったのか?」 僕の推理はどうも綱渡りで仕様がない。仮説に頼るのも大概だな、と思う。 僕は、犯人が生徒に罪を被せた理由を考えた。 第三者に罪を被せるということは、"なるべく自分から犯人像を遠ざけている"のではないだろうか。この仮説を信じ、犯人が生徒でないとすれば、消去法で考えて犯人は教師ということになる。 「チカ先輩、先ほどの職員会議の映像をもう一度お願いします」 犯人にとって、全ては不測の事態だったのではないか。 全ては仮説。 しかし確定しているのは、「テストは再制作されている」こと。 そして、「犯人はテストを欲しがっている」ことだ。 『先生方にお知らせします――…実は昨日、テスト用紙の盗難事件が発生しまして……』 『盗難!?』 『テスト用紙全部?』 『そんな……』 『何でまたそんな事件が……』 『カンニングだ、』 「―――止めて下さい」 映像が停止された。 「この声の解析をお願いします」 「木崎?」 犯人はテストを欲しがっている。 それならば、新しいテストを再び盗むはずだ。今度は、絶対にばれない方法で。 「声帯や読唇術から見ても、この先生で間違いないね。彼がどうかしたかい?」 モニターには、犯人の顔が大きく映し出されていた。 [←][→] [戻る] |