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 環先輩が、いつの間にかソファから立ち上がってモニターを見ていた。


 「お前のそういう発言、ムカつくんだけど。早く話してよ」
 「嘘って……何がだ?」
 「気付かないのか? 下らない、僕はすぐに分かったぞ!」


 環先輩は胸を張ってそう言うと、モニタリング室から出ていった。
 遠くから、迎賓室の扉が閉まる音がした。


 「あいつは何かを掴んでいても話そうとしない」


 チカ先輩は苛立たしげに眉を寄せた。


 環先輩はモニターを観ていただけだ。つまり、鍵はこの中にある。
 見回り、物音、空の金庫。テスト用紙、睡眠、刷り込み、盗難。
 電話。故障。ダイヤル。欠伸。


 「あ」


 まさか、いや、しかし。


 「何か分かったのか?」


 僕の推理はどうも綱渡りで仕様がない。仮説に頼るのも大概だな、と思う。

 僕は、犯人が生徒に罪を被せた理由を考えた。
 第三者に罪を被せるということは、"なるべく自分から犯人像を遠ざけている"のではないだろうか。この仮説を信じ、犯人が生徒でないとすれば、消去法で考えて犯人は教師ということになる。


 「チカ先輩、先ほどの職員会議の映像をもう一度お願いします」


 犯人にとって、全ては不測の事態だったのではないか。


 全ては仮説。
 しかし確定しているのは、「テストは再制作されている」こと。
 そして、「犯人はテストを欲しがっている」ことだ。


 『先生方にお知らせします――…実は昨日、テスト用紙の盗難事件が発生しまして……』
 『盗難!?』
 『テスト用紙全部?』
 『そんな……』
 『何でまたそんな事件が……』
 『カンニングだ、』


 「―――止めて下さい」


 映像が停止された。


 「この声の解析をお願いします」
 「木崎?」


 犯人はテストを欲しがっている。
 それならば、新しいテストを再び盗むはずだ。今度は、絶対にばれない方法で。


 「声帯や読唇術から見ても、この先生で間違いないね。彼がどうかしたかい?」


 モニターには、犯人の顔が大きく映し出されていた。




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あきゅろす。
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