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 「まあ主要五科目だけでは、学園の必要取得科目に満たないがな。俺は将来役に立ちそうな外国語を主に取っている」
 「キサキ君も今のうちに考えるといいよ。僕も五科目と外国語を取ってるよ」


 学年が上がる毎にややこしくなっていくシステムのようだ。
 僕は自室から持ち込んでいた英語の教科書をパラリと捲った。


 「ちなみに晴一は一般クラスだから、Sクラスに比べて必修単位数は少ないな。………まぁあいつは自主的に色々やってるみたいだが」
 「そうなんですか」
 「学力的にはSクラスなんだがね、面倒だからと言って手を抜いてるんだよ」


 チカ先輩は勿体ないと言いたげだ。


 「自分の勉強したい科目は一般クラスで取れるから、なんて言って、学年末のクラス編成査定で手を抜いてるのだよ」
 「あいつはTOEICも九五〇点以上をマークしている。やれば出来るという言い方をしたが、晴一は本当に頭が良いんだ」


 それは凄い。僕は感心した。TOEICとは、平たく言うと九九〇点満点の英語検定である。
 僕は桜庭先輩が、一般クラスレベルのテストを簡単だと言った理由が分かったような気がした。


 「環先輩は……」
 「環は教科書を一度読むだけで全て理解してしまうような、天才だよ。彼にはやる気がないだけだ」


 チカ先輩は吐き捨てるように言った。
 チカ先輩と環先輩は、同学年であるにも関わらず、あまり親しくしている姿を見かけない。もしかするとあまり仲が宜しくないのかもしれないが、それを突っ込む気はなかった。何か複雑な事情があるのかもしれない。


 ということは、風紀委員は皆勉強が出来るのか。ここで僕が赤点など取るわけにもいかないな、と思い立ち、苦手科目である英語くらいは勉強しておこうと思った。


 こうやって談笑しながら、あまり勉強をしないまま、テスト期間は過ぎて行ったのである。




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