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鳴海の話を軽く聞いた後は、入学式のために大講堂に移動した。他のクラスも移動中らしく、廊下は真新しい制服のやつらで賑わっている。ここでも「あれ誰?」「今年の特待生」という声がちらほらと聞こえる。
移動した大講堂もめちゃくちゃ広かった。
……何だっけこれ。オペラ座? 二階席とかバルコニーとかあるんだけど。
ぽかんと見上げていたら、「邪魔」と後ろから背中を押される。
「あ、すいません」
「さっさと進んでくれる? 後ろ詰まってるから」
言い方にカチンと来たけれど、実際後ろは迷惑そうな顔をしたやつらでいっぱいで、俺は素直に小走りで進んだ。
いつの間にか、大講堂は生徒で埋まってたようだ。二階席も隙間なく生徒でいっぱい。全校生徒は何人くらいいるんだろう。
『只今より、古賀学園高等部入学式を行います――…』
スピーカーから声が聞こえると、一瞬で大講堂は静かになった。
俺はこういうのが苦手だ。静かにしてるのって好きじゃないし、落ち着かない。うーんやりにくい、と思い横にいたやつを見てみたけれど、そいつは俺と違って真面目に前を向いている。
急に恥ずかしくなって、俺も真面目に話を聞くことにした。理事長の話とか興味ないし、職員紹介とかつまらないけど、人の話はちゃんと聞かなきゃいけないよな。うん。
けれど人間ってやつは不思議で、つまらない話を頑張って聞いていると、眠気が襲ってくる。どういう仕組みになっているのだろう、なんてぼんやり考えても、頭はすでに夢の中。うつらうつらと船を漕いでいると、
『それでは続きまして、古賀学園高等部生徒会会長、西園寺 司より、新入生の皆様にお祝いの言葉を――…』
急に脳が覚醒した。
西園寺 司って、西園寺 司?
………"司"?
ステージに一人の生徒が上がった。
短く切られた、赤みがかった茶色い髪。
モデル級に長い手足、まるで野獣みたいな鋭い目付き。
「………嘘だろ」
思わず声が出た。
あいつ、生徒会長だったんか!!
『新入生の皆様、御入学おめでとうございます――…』
一度聞いたら忘れない、色気がある重低音の声がスピーカーから流れると、周りにいたやつらはうっとりと目を潤ませた。
「素敵……」
「僕、高等部に上がったら西園寺様の親衛隊に入るって決めてたんだ!」
えっ、親衛隊って何?
『皆様が一日でも早く、古賀学園高等部に慣れ、そしてこの学園を愛し、三年間を送って下さることを――…』
お前はそんなこと言うキャラじゃねーだろ。
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