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理事長室からの帰りにすれ違った奴だ。
あいつが特待生だったのか。腹黒王子様が言っていた「満点合格君」。
「身体細っ!何食ってんだアイツ」
「木崎? 聞いたことないよね」
「今年の生徒会、もしかして……」
「えっ! 僕狙ってるのに!」
こんだけ騒がれてるのに、そいつは机に肘をついてぼんやりと黒板を見ている。
相変わらず無表情。………鈍いのかな。
「あの、」
「お前ら席着けー」
話しかけようとしたとき、教室の前のドアから先生が入ってきて、俺は言葉を続けることに失敗した。
席を離れてお喋りをしていたやつらも、きゃあきゃあと騒ぎながら自分の席に着いていく。
「クソガキ共、高等部来たからって浮かれんなよー」
茶髪。黒スーツ。シルバーアクセ。どー考えても教師には見えない先生が、教壇に立っていた。
いや待て、ホストだろアイツ!!
でもそいつはやっぱり先生らしく、黒板に名前を書いて自己紹介をした。
鳴海 嵐。
「鳴海先生とか嬉しすぎ!」
「ヤバイよね、毎日お化粧しなきゃ!」
クラスメイトのチワワみたいな可愛い奴が、口々に囁く。
え、メイクしてんの?
「おい、そこの特待生二人」
ホスト鳴海は定規を持って、俺と隣に座る満点君を交互に指した。
ご指名入りまーす。ドンペリ入りまーす。
「最初のテストは五月だ。クラス平均上げろよ」
げっ、マジかよ。
むしろクラス平均下げそうなんだけど俺……。
ホスト鳴海に指名され、クラス中の視線が一箇所に集まる。
「オタクっぽいし頭はいいのかも……」って、人を見た目で判断してはいけません。俺はただの馬鹿です。
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