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「まあ今回はお咎めなしにしてあげよう」
え。これでお咎めなし? 生徒会室の真ん中で全員正座させといて「お咎めなし」?
「何か文句でも?」と言い放った上ノ宮先輩に、首を思いっきり横に振った俺は、決して臆病なんかじゃない。ただ、先輩の瞳孔が再び開いただけだ。
「牧野君と鳴瀬君は風紀委員会でもマークしておくよ。斑目は………大丈夫だろうけれど、念のため見ておくかな」
「………お願い、上ノ宮」
「後は近江親衛隊の穏健派グループに頼んでおこう。美作副会長も、自分の親衛隊は収集を付けておいてくれよ。今は君のところが一番危険だ」
「………はい」
「西園寺、君もだ」
「………あぁ」
素直だ! 素直に聞いた!!
「じゃあ僕はやることがあるから失礼するよ」
そう言って出て行った上ノ宮先輩の、靴音が完全に聞こえなくなってから、俺たちはふーっと息を吐いた。
「怖かったねぇ〜」
「今日は司が悪いからね。大人しく言うことを聞こうか」
ニッコリ笑いながら、紫先輩は正座を解いた。正座が似合わないとか言ってごめんなさい。今の動作、王子様みたいに優雅で綺麗でした。
「今日は新入生歓迎会のプログラムを作らなくちゃいけないね。親衛隊の件も一息ついたし、頑張ろうか」
「………ん」
大倉先輩も続いて立ち上がる。弓道部に入ってるからか、正座は慣れた風だった。
「えぇ〜? 先に役員決めの公約作っとかないと、………ひゃあああああ!!!」
不満げに、紫先輩に抗議しようと立ち上がった近江先輩が、再び生徒会室の床に戻ってきた。
ずべっ、と間抜けに顔からすっ転ぶ。
「………響。だいじょうぶ、」
「いった〜い! 足痺れたあ!!」
小さい子供みたいにピーピー泣く近江先輩。
そう言えば、あのプライドの高い俺様野郎は、未だに大人しく正座をしている。
「………」
「………」
俺は司の足を、指でつんと突いた。
「い゛ッ………」
途端にその顔が歪む。
「てめッ……!」
「バーカバーカ! 痺れてやんの」
「てめぇはどうなんだよ晶?」
「ひぎゃああああ!!!」
足首を思いっきり掴まれて、上半身が床に落ちた。
めっちゃ痺れてる。めっちゃ痺れてる!!
「いきなり掴むなバカ! 司!!」
「俺の名前が貶し文句みたいになってんじゃねーか!」
「正座なんて生まれてから数えるくらいしかしたことねーんだよ!!」
「ハッ、庶民が」
「お前も痺れてんじゃねぇかぁぁぁぁ!!!」
その後、足の痺れが治るまで、口争いが勃発(床の上で)。生徒会室に書類を届けにきた晴一さんに、「何してんのお前ら」と呆れられることになる。
まあ、この痺れと引き替えに学園が変わっていくんだから、良しとしよう。
なんて、この学園に入ってから考えることを諦めた俺は、足の裏をマッサージしながらそんなことを思っていた。
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