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「牧野がご迷惑をお掛けして、申し訳ございません」
「あ、いや」
「突然のことで驚いたでしょう。しかも親衛隊など、あっても困るでしょうし」
何だろう。この人は、俺が考えてた「親衛隊」のイメージとは全然違う気がする。
大人っぽくて落ち着いてて、何て言うかその、「僕らの生徒会役員様に近づくゴミ虫! 制裁!」みたいな雰囲気がまるでない。
「親衛隊が過激なのは、西園寺会長と美作副会長、そして書記の近江のところです。俺たちは制裁と称した暴力を好まない」
斑目先輩は俺の脳内を読んだみたいに、突然話し出した。………顔に出てるのかな。
「新しい隊の申請が来ているようですね」
「え?」
何で知ってるんだろう。
そう疑問を浮かべたところで、生徒会役員の親衛隊は個人個人で分かれてるけれど、元締めは「生徒会役員親衛隊」であることを思い出した。
「牧野先輩と皆川隊長が朝から揉めてました。あぁ、皆川隊長というのは、西園寺会長の親衛隊隊長です」
「はぁ……」
「別に、悩まなくてもいいと思いますよ」
斑目先輩は立ち上がって、スラックスについた草をパンと払った。
「牧野先輩は、あぁ見えてしっかりしていますから。きっと制裁や暴力によって市川君を囲いたいのではなく、本当に君のことを好きなんです」
「………」
俺の不安だったことを、そのままずばりと当てるような言葉。
うーん、さすがは大倉先輩の親衛隊隊長とでも言うべきか。さっきから俺の心理を読むような人だ。
これくらい鋭くなきゃ、大倉先輩の親衛隊隊長は務まらないのだろうか。大倉先輩も、何を考えてるのか今一つ読めない人だし。
「あの」
失礼かとは思ったけれど、俺はその場を離れようとする斑目先輩に声を掛けた。
「はい」
「斑目先輩は、何で大倉先輩の親衛隊なんかやってるんですか?」
勝手なイメージだけど、斑目先輩が大倉先輩にキャーキャー言ってる姿なんか想像付かない。どちらかと言えば、そんな親衛隊をうざがってる顔の方が簡単に想像が出来た。
「悠仁とは幼なじみなんですよ。実家が近くて、幼稚園の頃からの付き合いです」
「そうなんですか」
「悠仁が生徒会に推薦されたとき、親衛隊発足の際は散々揉めたんです。あいつがごねて」
思い出したのか、斑目先輩はクスリと笑った。
「気心の知れた俺が隊長として親衛隊を纏めた方が、狂信的なファンクラブを作らずに済むと思ったんですよ」
「はぁ………」
「勿論悠仁のことは好きですが、そういう感情はありません。けれどそれくらいが丁度いいかと思いまして。要するに愛ですね、俺なりの」
今度は、去っていく斑目先輩を引き止めたりはしなかった。
「よいお返事を期待しています」
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