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どうしよう
 
 
 「どー思う?」


 今日の夜ご飯はピザ。

 何と木崎の部屋には窯があって、パンでもピザでも焼くことが出来る。その存在すら知らなかった木崎にそれを告げると、「ニシンとかぼちゃのパイも焼けるな」と何やら呟いていた。木崎の好物なのかな。聞いたことない料理だけど、今度作ってみようと思う。


 「欲を言えばもう少々ピザソースが多くてもいいと思う」
 「違ぇよ!」


 真顔でチーズをびろんと伸ばしながら言う木崎に、突っ込みを入れた。もうこいつ、頭いいんだか天然なんだか分かんない。


 「親衛隊のこと!」
 「あぁ………別にいいんじゃないか?」
 「……他人事だと思ってるだろ」
 「…………」


 木崎は無言で眼を逸らし、ピザにハラペーニョソースを掛けている。誤魔化そうとしているのかもしれないけれど、そうはいかない。この数週間で、無表情な木崎の考えてることが、ちょっとは分かるようになってきた。


 「別に親衛隊とかさ、あってもなくてもいいっていうか」


 サラミを指でつまんで口に入れる。


 「でも面倒だからいらないっていうか」
 「熱っ」
 「でも何か親衛隊の人たちが熱くてさ、断りきれなかったんだよなー。返事先延ばしにしちゃった」
 「このチーズはよく伸びるな」
 「聞けよ!!」


 何こいつ、ピザのことしか考えてないの?

 薄情すぎる木崎に、ちょっと涙目になりながらピザを食べた。本当だ、このチーズ凄く伸びる。しかも、ちょっと味付けが薄い。意外とまともなことを言っていたらしい。


 「別にあってもいいんじゃないか?」


 若干やさぐれ気味にピザを食っていると、木崎が手を休め口を開いた。


 「え?」
 「なくてもいいなら、あってもいいじゃないか。お前を慕っている人間を自分で見張っておかないと、そいつらが暴動を起こしたとき面倒だぞ」
 「何で?」
 「"市川君のことを想って"なんて言われたら甚だ迷惑だ」
 「………確かに」


 まあ、牧野先輩はそんなこと言いそうな感じの人には見えなかったけれど。司や紫先輩の親衛隊を思い出して、そうとは言い切れないかもしれないと思う。


 「適当に認可を出しておけばいいんだよ。逆にお前を大義名分にして暴動を起こしたら、解散なり何なりさせればいい。とりあえず実験的に発足させてみたらどうだ?」
 「…………」


 うーん、そんなもん?
 やっぱり親衛隊が出来るということは、「市川君に近づく人間排除しちゃうよ!」みたいなイメージが付いてしまったから、怖い。木崎とだって、一緒にいられないかもしれない。只でさえ馴染んでないクラスメイトとも、ますます話せなくなるかもしれない。

 ハラペーニョソースの瓶を逆さにして、中身をピザに掛け頬張った。


 「………むっ!?」


 それが思ったよりも辛くて、慌ててグラスを掴み一気に飲み干す。
 それでも舌がヒリヒリする。こんなもんぶっ掛けるなんて、木崎はどんな味覚をしてるんだ。


 「辛いなら言ってほしかった……」
 「普通に掛けてたから、平気なのかと思って」
 「平気じゃない……」


 我ながら理不尽だな、と思いながら、新しく注いだ水をまた一気に飲み干した。




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あきゅろす。
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