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 教室の入り口近くで立ち止まる木崎が、追いついた俺に言った。


 「え?」
 「疲れてるみたいだから。仕事量も多いし大変だろう」
 「あー………ははは」


 正直なところ、高校の生徒会なんて、特にすることもないと思っていた。
 それがあるわあるわの大洪水。部活の予算出したり委員会に出たり、行事予定立てたり。後は覚えてない。多すぎて忘れるくらいにあった、ということだけは覚えている。
 何でもこの学園の生徒会は「教員と生徒の繋ぎ役」として動いてるらしく、どんな小さいことでもまず、先に生徒会に持ち込まれる。それを生徒会役員がチェックして、オッケーなら書類にして簡潔にまとめて、職員会議に提出。これが俺たちの仕事だ。

 俺様何様バ会長だなんて思っていた司も、生徒会の仕事は真面目にやっている。
 紫先輩は全体を見渡しながら、近江先輩は時々サボりながら、大倉先輩は部活に通いながら。

 俺は書類の整理とか、コピー取ったりとか、お茶淹れたりとか……あれ、OLさん?
 とにかく雑用ばっかやっている。まあいきなりデカイ仕事やらされても焦るんだけど。


 「大丈夫、大変っちゃ大変だけど」


 そう、生徒会の仕事に「疲れている」というほど、俺は仕事が出来ない。
 計算出来ないし。漢字読めないし。四分の三拡大コピーなんて言われたとき、やたらデカイなーなんて思いながらコピー機を操作してたら、何と一七五パーセントでコピーしていた。司には呆れられるし紫先輩には笑顔で説教されるし、近江先輩と大倉先輩には笑われるしで散々だった。日本語難しい。

 俺が無意味に笑って言うと、木崎は「そうか」とそれ以上突っ込むことはしなかった。こういう干渉しない優しさが木崎のいいところだと、俺は思っている。


 「それより木崎はどう? 風紀委員」
 「どう、って何がだ」
 「大変?」
 「いや、………迎賓室でお茶を飲んでいるだけだ」
 「えっ」


 何それ、仕事?


 まあそんな俺も、一応生徒会役員なわけで。
 この学園の法則として存在するらしい、「生徒会役員には親衛隊がいる」という事実に直面することとなる。




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