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 「確かEクラスの………」
 「矢嶋祐希だよ、庶民君」


 俺の声に重ね、矢嶋はフンと鼻で笑った。
 木崎はそんな矢嶋をじろじろ見ながら、「矢嶋か……」と呟く。


 「ジロジロ見ないでくんない?庶民が移るから」
 「ッ!!おい!」


 あくまで攻撃的な矢嶋に、俺は抗議しようと咄嗟に口を開いた。


 「矢嶋……矢嶋溶鉱代表取締役の次男か………」


 が、当の木崎は相変わらず冷静に、何か考えてるような仕草で宙を仰いだ。


 「だから何? 僕に取り入ろうとしても無駄だけど」
 「確か矢嶋溶鉱はバブル崩壊時、古賀財閥の子会社に借金をして財政を立て直したとか聞いたな………あそこの社長はかなりの見栄張りだから、寄付金をせしめようと踏んで子息の入学を薦めたのか………。理事長もよくやるな」
 「はぁ!?何なの!?」


 え、何これ?

 矢嶋は木崎の言葉に顔をカッと赤らめ、腕を振り上げた。
 ――その腕をパン、と乾いた音が払い落とす。


 「―――大概にしぃや」


 木崎に手を叩かれ、矢嶋は固まった。まさか、やり返されるとは思ってなかったのかもしれない。
 その矢嶋の耳元で、木崎は確かに呟いた。


 「家(ウチ)ごとしばいたろか?」


 どこか愉しむようにも聞こえるその口調。
 紫先輩よりも真っ黒な木崎の背中に、俺は魔神を見た。
 ……ていうか、何で関西弁?

 満足したらしい木崎は、掴んでいた肩を離して立ち去って行く。
 目を見開いて石化した矢嶋は、ギギギと音がしそうなくらいゆっくりと首を動かし、俺に視線を向けた。

 いや、そんな涙目で見られても………ごめん矢嶋、俺も怖い。





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