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今度また淹れてあげるね、と言いながら、先輩もカップを手に取る。足を組みカップを持つその姿は、本当に王子様みたいだ。
「それにしても分からないのが……君の変装がどうやって明るみに出たか、というところだね」
「え?」
「僕に泣きながら訴える親衛隊は、君に気を取られていてね。その件については全く触れていない」
「………変装」
そうだ。変装さえ解けなければ、司が俺を庇う必要すらなかったし、司にバレなければこんな事態にも発展しなかったはずだ。
そこではたと気づく。……待てよ、変装が解けたのは。
思考の鈍る頭に響く、耳に心地よい綺麗な声。
『悪いな、市川』
木崎かぁぁぁぁぁ!!!
「そうだ俺木崎に水ぶっかけられてスプレー落ちてそれは二人だけの秘密で」
「木崎って……あぁ、特待生の」
そうだ、木崎が俺の頭に突然水をぶっ掛けて、それでスプレーが落ちたんだ。おぼろげな記憶を辿れば、あのとき眼鏡を外されたような気もする。確信はないけれど、そうでなければ俺の眼鏡の行方についての辻褄が合わない。
やられた………黙っててくれると思ってたのに。え、どうしよう凄いショックだ。
「………木崎君も、もしかしたら」
「え?」
美作先輩は口元に指を当てて、何か考えるような顔をした。
そしてゆっくり口を開く。
「……多くの生徒が集まる昼の学食で、君の変装を解いたんだ―――…それも司が来たときを狙ってね。多分、彼が描いた展開は二つだ。一つは、君の素顔を゙なるべく多くの生徒の前で゙明かすこと。もう一つは、君の素顔を゙司の前で゙明かすことだ」
美作先輩は考えながら話してるらしく、少しの間が空いた。
「君の外見をからかっていた生徒への牽制。そして司に君を見つけさせ、生徒会に入れさせる。………以前、彼が生徒会室に来たとき、司は彼に人手不足を漏らし、彼を生徒会に引き入れようとした。彼はそれを覚えていたんだね。司が君を庇うという意味も含め、君を生徒会に引き入れるだろうと、そこまで予測したうえで君の頭に水を掛けたんだ」
「なるほどね」と一人納得する美作先輩に、ぽかんと間抜けな顔をする俺。
え、よくわかんないけど、要するにこの状況は、木崎の思惑通りなわけ?
「君を庇うためとは言え、こんな手段に出るとはね」
美作先輩は「さすが」と苦笑して、それから穏やかに笑った。
愛されてるね、晶。
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