ようこそ生徒会室へ
そして今に至る。
「アキちゃんがつーくんの探してた人だったんだねえ〜」
北校舎三階、生徒会室。
中学の会議室を思い出す、スチールのデスクに長机が、コの字を作っている。上にはパソコンやノートが山積みになっていて、ここで生徒会としての仕事をしているということが分かる。
が、俺が座っているのはふっかふかのソファだ。事務的な家具とは正反対の応接セットが、それらの脇にはあった。金色の縁(フチ)。薔薇の模様が織られた、淡いグリーンを基調としたソファカバー。お揃いのテーブルには、白いレースのマットが敷かれている。ロココだ。ヴェルサイユだ。マリー・アントワネットだ。何故ここだけ十八世紀なのかと、質問したい。が、その質問相手であるチビッコ先輩―――近江 響先輩そのものが疑問の対象であり、何となく質問しにくい。
あなたは本当に先輩なんですか。高校生なんですか。大体、男なんですか。
とか、失礼だから聞けず、俺は応接セットについての質問も出来ずにいる。
「………"アキちゃん"?」
「うん。僕が付けたあだ名だよぉ?」
「………ははは」
テーブルには「今はユカリンがいないから、お茶淹れてあげるねっ!」と言われて出された紅茶が載っている。
隣に置かれた瓶。中には角砂糖が入っている。何故知っているかというと、近江先輩が俺の目の前でそれを六個、ティーカップに入れて下さったからだ。
六個。
砂糖が、六個。
飲めない。無理。絶対甘い。
ちらりと横に座る近江先輩を見遣ると、その目はキラッキラ光ってて、………どうしよ。
「…………いい。俺が、飲む」
「へ?」
どうしようかと考えていたら、それまで黙って向かいに座っていた先輩が、ひょいとカップを持ち上げた。
「え、ちょ」
「あぁ〜!アキちゃんに淹れたのにぃ!」
そしてそのまま一気に、砂糖味の紅茶を飲み干した。
「ひどいよ悠仁!」
「…………甘い」
身を挺して砂糖紅茶を飲んでくれたのは、第二学年の大倉 悠仁先輩。
近江先輩とは逆に、この人は背が物凄く高い。自称モデル体型・実際モデル体型の嫌味馬鹿こと司よりも身長が高い。けれど司よりも筋肉が付いてるから、何かスポーツでもやっているのかもしれない。
細い目が犬っぽいイメージだ。ラブラドールみたいだな。
ここにいるということは、二人は生徒会の役員らしい。
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