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学園祭・2
 
 
 途中で何度か写真の撮影を頼まれながら、第三学年Sクラスへ向かう。学校とは思えないこの建物は、どうやら女の子好みらしい。「こんなところに住んでみたい」という声が時折聞こえ、それをバックに撮影をする。そういえばこの前生徒会室で見た写真の背景は、こんな建物でなかったような気がする。いつか建て直しをして今の形に至るのかもしれない。

 第三学年Sクラスはノンアルコールカクテルを扱うバー……という建前のホストクラブだ。やっぱりと言っていいのか、他のクラスよりも待ち客の年齢層が高い気がした。
 スライド式のドアは改装されて、何やら豪華な扉に代えられている。俺が言い出したことではあるのだけれど、たかが学園祭にここまで経費を掛けてもいいんだろうか。ていうか校舎を改造しても何も言わないのか、教師。

 木崎はまだ来ていない。

 俺は近くの壁に凭れて木崎を待つことにした。最初は中で待とうかと思ってたけど、この混み具合じゃ入れそうにない。それに、女の人だらけの列に混じってホストクラブの空きを待つのは、何だか気が引けた。


 「イケメンばっかりらしいよ」


 列の最後に並んでいた女の人が、頬を赤く染めて言う。足は折れそうなくらい細く、身長はもしかすると俺よりも高い。
 はしゃぐ姿を素直に可愛いな、なんて思う自分が嫌だった。


 「あれ?」


 その声が俺を呼んでいると気づいたのは、周りにいた女の人たちがその声の主と俺を交互に見ていたからだ。


 「お前縮んだ?」


 人垣からひょいと出てきたその人に、俺ははっと息を呑んだ。
 意思の強そうな鋭い目つき。高い鼻に形のいい唇。一度見たら忘れられないんじゃないかと思わせる、強烈な美貌だ。魅了するんじゃなくて、畏怖させる。
 氷のような冷たい眼差しには僅かに親しみが宿っていて、俺は戸惑った。こんな人、知らない。けれど俺が戸惑ったのは、どこかで見たことがあると思ったからだった。この感覚を、俺は知っている。

 その人は俺の前に立ち止まる。肩が竦む。身が強張る。
 そんな俺の緊張も知らないその人は、突然ぺたぺたと俺の頬に触れた。


 「………は」
 「それ以上縮むとかねぇだろ。何? 恭子さんに似たわけ?」
 「あの……」
 「でもあの人身長高いよな。お前だけだろちっさいの。好き嫌いしてっからちっさいんだよ」
 「………あの、」
 「てか髪ヤバくね? こんな染まるかよ普通。お前こんなん好きなわけ?」
 「あの!」




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