[携帯モード] [URL送信]
--05
 
  
 「ほら、これ」


 薄い黄緑の付箋を捲り、ページを開いたそれを渡された。
 分厚い冊子。背表紙を見ると、「古賀学園生徒会 活動記録」と書いてある。パラパラと捲ると、四月から三月まで、一年分の行事が写真や文で記録されていた。年号も書かれているから、毎年作っているものなのかもしれない。これは、十年近くも前のものだ。紙の表面がところどころ黄ばんでしまっている。


 「その年以降、学園祭はやってないってよ。それが今のところ一番最後の学園祭だ」


 司に言われて、再び付箋のページを開く。
 古賀学園、学園祭。
 確かにそこには学園祭の記録がある。十年前からやってないなんて、勿体ない。ていうか、今まで誰か提案しなかったのか。


 「………あれ」


 ふと手が止まった。
 白黒の写真の中で、一枚に視線が引き寄せられる。

 派手に飾り付けられた教室の前。二人の生徒が肩を組んでいる。
 一人は肩まで伸ばした髪の毛先を跳ねさせ、もう一人は少し地味な眼鏡を掛けている。二人とも楽しそうに笑っている。写真の下には、生徒の名前が書かれていた。


 「新名………?」
 「いつまで見てんだ」
 「あ」


 ひょい、と頭上から冊子を奪われた。


 「まだ見てんだよ!」
 「そんな暇あるなら手伝え。二日前だっつーのに終わんねぇ」
 「………うっ」


 紫も一人で行けっつーの、と司はジェンガのてっぺんに冊子を積み上げる。見上げれば首が痛くなるほどの高さにあるそれは、俺の身長だと届かない。くそ、まだまだ成長してやる。


 「実行委員の当日の動きと、全体のスケジュール。これコピー取ってホチキスで留めて」
 「………はぁい」


 ばさりと紙の山を空いた手に積まれ、俺は渋々コピー機へと向かった。機械に紙を挟んで、印刷ボタンを押す。静かな起動音と同時に、印刷された紙が次々と吐き出される。

 あの写真がまだ、引っ掛かって離れない。


 あの人、木崎に似てた。




[←][→]

16/34ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!