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「体調悪いのかな? 顔色も悪いし……」
木崎をちらちらと見ながら、織田が不安げに言う。正面を切って見つめるには脅えが混じるのだろうその仕草は、何か野生の小動物を連想させられる。
「昼食べてないから。栄養足りないんじゃないか?」
「えぇっ!?」
「おい市川! お前がちゃんと食べさせなきゃ駄目でしょ!!」
「何でだよ!!」
あまりに理不尽なクラスメイトに、ほぼ反射的に突っ込みを入れた。どうして織田まで批難めいた眼差しを俺に向けてくるのだろう。さっきはあんなに脅えてたじゃないか。俺なら何言ってもいいってか。
「……いや、俺が言ってもどうしようもないし、木崎は放っておくしかないの」
両手を制すように挙げて示す。木崎の場合は自分でやらないと決めたら、いくら俺が言ったところで効果はない。だから今回も、いくら俺が勧めても食べないだろう。
しかしそんな木崎の性格を知らないクラスメイトの批難は俺に集中した。
「ひ、ひどいよ市川!」
「友達甲斐ねぇなあ……」
「じゃあお前ら、空腹で機嫌悪い猛獣の口を無理やりこじ開けて餌やったり出来るのか? ムツゴロウさんのように信じていれば通じ合える相手じゃないんだぞ、木崎は」
とにかく危険であることを小声でアピールする。
すると後方から殺意の入り混じった、というか殺意しか籠ってないんじゃないかというくらいに凄まじい眼力が俺を襲った。
「………え゛」
「誰が猛獣だって?」
木崎だった。
俺を始めとしたフード班メンバーが、凍りつくのが分かった。ちなみに有坂は、その視線が届かない場所へとすでに避難している。
「あーはははは、えーっとこれはその」
「………機嫌が悪いのは確かだ。迷惑を掛けているのは謝る。が、治りそうもないから放っておいてくれ」
今度こそ殺られると思っていたものの、木崎は一息に言うと、再び机に突っ伏してしまった。
隣にいる委員長を見遣れば、ニッコリと笑って手を振っている。
「……木崎って、何者?」
あれは機嫌が悪いというよりはむしろ、意気消沈しているようにも見えた。
「………さぁ」
あんな木崎を見たことのない俺は、どう対応していいのか分からずクラスメイトに救いをもとめる。が、そのクラスメイトも木崎のような人間には関わったことがないらしく、一様に困ったような表情を返されてしまった。
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