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委員長は、友達をあっさりと売ったのだった。
ライバルであったはずの第二学年のクラス委員長でさえ、その堂々たる顔ぶれに頬を赤らめ惚ける始末。どよめく小会議室で、委員長は更に続ける。
「ドルチェは将来有望の的井 重幸が指揮を執ります。インテリアに音響、紅茶のサーブに至るまで未来のプロフェッショナルを据えています。そしてトータルプロデューサーはこの僕、白薙 北斗が」
笑顔でさらっと言う委員長に、実行委員は総立ち、スタンディングオベーション。
会議室は拍手に包まれた。
「いや、あれはマジで笑ったわ」
さっきを思い出したのか、駒井先輩は押し殺すように笑った。
「笑えませんよ。ていうか、最初に立ち上がったの駒井先輩じゃないですか」
「いやー、マジで全員立つと思わなかったし。Cクラスの委員長、教室戻ったら責められるだろーなー」
すでに全員が帰った小会議室で、駒井先輩は各クラスの資料をまとめている。仕事が早い、なんて言ったけれど、こうやって熱心に仕事を進められるからこそ、実行委員会は手早いのかもしれない。
「駒井先輩、俺生徒会室戻るんですけど」
「いいよいいよー。戻んな」
「先輩も良かったら来ませんか?」
生徒会室に行けば、お茶もお菓子もある。頑張ってる駒井先輩を一人残して行くことに罪悪感があったのだ。
「うんうん、気配り上手は良妻の条件だからねぇ」
「………何言ってるんですか」
「司が惚れるのも分かるわー。俺も市川狙っちゃおうかな」
「ぎゃあああ!! ケツ触らないで下さい!!!」
やっぱり誘わなきゃよかったな、と思いながら、二人で生徒会室へ向かった。
「げっ。何連れて来てんだよ晶。戻してこい」
生徒会室に着くと、司がまるで捨て犬を拾ってきた子供に対するような態度でシッシと追い払った。
「うわー。司ひどくねぇ?」
「晶、次からこんなの連れて来るな。腐る」
「お前がいる時点で汚染されてるっつーの。あ、美作ー俺にもお茶淹れてっ」
美作先輩は呆れ顔で、それでもオレンジティーを淹れてくれた。俺が勝手に呼んだお客様だからと、お茶請けの手伝いをする。冷蔵庫に入れておいたオランジェットを、冷やしてあった皿に盛り付けた。
「へぇ。晶のクラスはメイド喫茶なんだ」
未だに現れない近江先輩と大倉先輩を待つ間、四人で休憩のお茶にすることにした。実行委員会の会議にも第二学年のSクラスは出席していなかったから、おそらく未だクラスの催しが決まっていないのだろうというのが駒井先輩の見解だ。言われて確かに、近江先輩と上ノ宮先輩が争っている姿が目に浮かんだ。
「そうなんですよ。木崎がやる気出しちゃって」
「木崎君が?」
「焼肉」
俺が言うと、司は「あぁ」と思い出したように呟いた。
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