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実行委員会
 
  
 「へーえ。一年のSクラスはメイド喫茶ねぇ」


 にやにやとする学園祭実行委員長・駒井先輩に、俺は「笑わないでください」と抗議した。


 「木崎の思いつきに皆賛成しちゃったんですよー……何で俺がメイド服……」
 「似合いそー。俺当日遊びに行っちゃうから」


 おさわりオッケー?と腰を抱く駒井先輩の腕を、俺は笑顔で振り払った。

 元々の予定に無理やりねじ込む形で成立した学園祭の準備は、恐ろしいほど早く進行している。
 その理由の一つとして、実行委員会の動きの早さが挙げられる。駒井先輩を筆頭とする実行委員会――各クラス委員長が代表となって結成――は、スケジュールや外部への案内状、校内の飾り付けなど、次々と案を出していく。それを生徒会で処理して申請するのだけれど、ほとんど確認なんてしなくてもいいくらいに骨組みからしっかりしているのだ。
 何より、代表の駒井先輩が早い。最も集客数の多いクラスに贈るという「焼肉券」にしたって、学食側との話をつけるのが早すぎる。この件については、生徒会の誰も知らなかったくらいだ。


 「ま、日頃のコネっていうの? そういうのを大事にしてたら、後々役立つわけよ」
 「そーデスか」
 「焼肉券は、馬子の人参。ゴリラのバナナ。司の市川」
 「ちょっと最後の何すか」
 「やる気のない人間に与える、俺からのご褒美ってわけ。最初"駒井 祐先輩を好きにできちゃう券☆"だったんだけど、お前んとこの委員長に反対されて」
 「当たり前です」


 何だその「好きにできちゃう券☆」とやらは。どこの層に需要があるんだ。

 木崎のあのやる気は、駒井先輩によって引き出されたのかと苦笑が漏れる。
 クラスメイトに「どんな催しをするのか」と問い詰められ、木崎が適当に出した案―――「メイド喫茶」は、意外にも好評だった。男子校でメイドってどこのギャグかと思ってはいたけれど、一部の乙女チワワたちは着る気まんまんだった。
 俺は反対した。木崎も自分が着るとは思っていなかった。が、委員長が突如差し出した「焼肉券」によって眼の色を変えた木崎は、何と俺と有坂を巻き込んで、クラスの催し「メイド喫茶」に認可を出したのだ。

 父兄や中等部の生徒、外部からのお客様も来るっていうのに、そんな案が通るわけがない。
 俺はそう思っていたけれど、申請は今日の会議であっさりと通ってしまった。


 「危なかったな。無事に勝ち取れてよかったよ」


 会議終了後、去り際に委員長は至極爽やかな顔でそう宣った。

 何とこの、「ドキッ☆男だらけのメイド喫茶」案は、第二学年Cクラスと被っていた。ありえない話だが被っていた。先輩である第二学年に譲るであろうと安心しきっていた俺は、委員長のスピーチ力に舌を巻くことになる。


 「我がクラスの衣装担当は、ご両親がアイドルプロデューサーである梨元君を、縫製は手先の器用な生徒が率先して担当して行います。そして肝心のキャストには、高飛車で靡かないと有名な有坂 巡、新入生抱きたいランキングで見事トップ3入りを果たした千原 史乃、そして生徒会と風紀委員会のホープ、市川 晶と木崎 龍馬をご用意しています」




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