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前からうっすらと思ってはいたけれど、この学園は個人主義的な部分が強すぎる。
何でも生徒個人の意思を尊重。勿論それはいいことだと思うし、俺もそんな校風に助けられているところはある。けれど、個人個人が育っても、チームワークが欠けてたら駄目なんじゃないの。もっとクラスとか、学園が一丸となって取り組める行事があってもいいんじゃないの。
そんな気持ちを込めて言うと、木崎は肩を竦めて桐生委員長を見遣る。
「……だそうです。いいんじゃないですか、嘉之先輩」
「木崎、」
「理事長が許可したのなら撤回は不可能でしょう」
木崎が諦めたように言うと、桐生先輩と晴一さんが同時に項垂れた。
座ってお茶を飲んでいた美作先輩はすくっと立ち上がると、床上でバトルを繰り広げていた近江先輩と上ノ宮先輩に近づいていく。近江先輩にのしかかるような体制を取っていた上ノ宮先輩の腹を目がけて蹴りを………入れるも、すんでのところで上ノ宮先輩がそれをかわした。腕力で床から離れ、後ろに跳躍する。
「何するの」
「遊んでいる方が悪い。行くぞ」
「えぇーまだ遊ぼうよぉ」と床から起き上がった近江先輩を、上ノ宮先輩がギッと睨んだ。その間に言葉を交わしていたらしい司に、木崎は礼をして生徒会室を出て行く。
ソファの影から大倉先輩がそっと顔を出し、俺を見上げた。
「………終わった?」
終わりましたよ、と言いかけて俺はあっと驚く。
一瞬視線を外した隙に、上ノ宮先輩と美作先輩はいなくなっていた。
「よっし。はい終了〜」
パンパンと手を叩く司に、「お茶淹れなおそうか」と立ち上がる紫先輩。近江先輩は未だに床に座って「つまんなぁい」と駄々を捏ねている。
「……何かすいません」
何か、俺のわがままに付き合わせたようで申し訳ない。
「何で謝るの?」
「え?」
短時間で疲れてしまった俺が言うと、床の上の近江先輩がきょとんと首を傾げた。それが本当に、本気で疑問だという表情で、俺は言葉を詰まらせる。
「みんなでアキちゃんのお願い事叶えるのは、アキちゃんが好きだからなんだよ? 謝っちゃダメだよ」
だから笑ってね、とパッと微笑む近江先輩。
大倉先輩も、紫先輩も、司も。
俺を見て笑ってくれる。ほんの少し前まで使い物にすらならなくて、今ももしかしたら補佐として役立つことも出来ていないかもしれない俺を。
「……ありがとう、ございます」
まだお返しは出来ないから、せめて笑おう。
こんな俺に優しくしてくれる先輩たちに、感謝の気持ちが伝わるように。
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