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 きょとんとする近江先輩に、俺は視線をぐるりと生徒会室一帯に行き渡らせる。
 近江先輩が知らないことに違和感はない、そういう存在だから。でもまさか、司も紫先輩も大倉先輩も知らないなんてこと、


 「ガッコウサイ………祭か?」
 「何か祀るものなんてある?」
 「………りじちょう。?」


 ばーかあんなもん祀ったら夢見悪ぃんだよ、と言い切る司に、俺は脱力した。
 本当に、本気で、知らないとは思わなかったのだ。


 「あの、………祭というか、何か、学園全体をお店に見立てて色々やったり、ステージで何か発表したり、実際に何かお祭りをやるんじゃなくて、お祭り騒ぎ、みたいな感じです」


 お坊ちゃま、嗚呼腐っても、お坊ちゃま。

 五七五口調のそんな短歌――とも呼べない標語が頭をよぎる。
 この学園に籠っていると、本当にここが常識になってしまうらしい。学祭って、俺の中学にも普通にあったんだけどな。準備に参加しないで当日だけ出席したら、女子から大バッシングを受けたのはいい思い出だ。


 「………お祭り騒ぎ」
 「晶はそれ、やりたいの?」
 「いえいえ! そういう意味じゃなくて」


 紫先輩が本気で考えているようだったから、俺は慌てて首を振った。


 「ちょっと言ってみただけです! クラスの皆で何かしたりとか、友達呼んだりとかしてみたかっただけなんで」


 俺の気まぐれな発言で、行事をねじ込ませるわけにはいかない。
 夢中で訂正すると、紫先輩は「そう?」と言って次の話題に移る。近江先輩は「クリスマスはどうするの?」とお茶を飲みながら言い、大倉先輩はうつらうつらと眠りの体勢に入っている。

 ほっとする俺は、思案する司には気づかなかった。


 ◆


 「最初は理事長も反対してたんだけど、中等部生徒の学園見学のいい機会だとか、保護者や企業へのアピールになればとか、適当なこと言って認可出させた」


 ………そんなもっともらしい理由作って、無理やり行事予定立てたんかこいつは。何? 生徒会長って、生徒のトップじゃないの? こんな我儘っていうか自己中っていうか、自分本位なやつが上にいていいわけ? 適当なこと言って理事長印捺させるようなやつが生徒会長でいいわけ?


 「ん? 何震えてんだ晶」


 テーブル越しのソファに陣取り、俺の熱意が伝わったんだなぁとほざく司の頭を、俺は思いっきり蹴り上げた。


 「い゛ッ………!?」
 「怒りで震えてんだよバーカ!! 馬鹿じゃないのお前なにやってんの!?」
 「ぁん? お前が学祭やりたいっつったんだろーが」
 「言ってねぇよ!!!」


 どんな頭してんだお前は!!




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あきゅろす。
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