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 話は二学期の始まりに遡る。
 行事予定の立案会議が、生徒会役員のみで行われた。去年の行事予定を参考に、去年の役員が残してくれた反省点などを活かしつつ、すでに立てた今期の予定へ肉付けをしていく作業だ。


 「特に予定って予定もないんだけどね」


 まだ夏の余波(ナゴリ)が残っていた。クーラーの効いた生徒会室、進行役(もう実質生徒会長)である紫先輩がプリントを配りながら言う。


 「あれ? 今年はハロウィンしないのお?」


 近江先輩は受け取ったそれを眺め、くるりと目を丸くした。


 「………しないよ」
 「えぇー? 面白かったのにぃ」


 紫先輩の「………」で何かを悟った俺は、質問しようと開きかけた口を噤んだ。ハロウィンって何したんですか?とか、そういう質問だ。近江先輩が「楽しかった」と言って紫先輩が沈黙するということは、ろくなことは起こらなかったということが想像出来る。


 「………去年。会長が、考えたの」


 大倉先輩は俺の考えを察してか、ぽつりと呟く。


 「え? 司が?」
 「んなわけねーだろ」


 右隣の先輩に向かって聞けば、正面からツンと衝撃が来る。


 「痛っ!」
 「去年の会長。俺がこんなふざけた行事考えるかよ」


 司がプリントを紙飛行機にして飛ばしたらしい。
 紫先輩が「無駄にしないでくれる?」と笑顔で言うと、司は頬を引くつかせて俺の手から紙飛行機を奪った。

 去年の会長とは、悪名高き人だ。「去年の会長」という単語は最悪の事態にしか耳にせず、顔を会わせたことはなくとも、あまりいい印象は持っていない。いい印象どころか、司を更に悪化させたようなイメージしかない。


 「まぁ特に追加する要素もないよね。いいんじゃない」
 「むぅ〜……行事少なくてつまんなぁい」
 「いいじゃない。平和が一番だよ」


 俺もその紙に目を通す。
 一応生徒会に関係のない行事についても書かれているらしく、中間テストだの部活動交流だの。全校生徒ぐるみで行われる「体育祭」は、横に二本線が引いてあり、上に「廃止」と書かれていた。その文字の色――赤に、思わず苦笑する。行事のタイトル的にも、「ハロウィン」同様、ろくなことは起こらなかったのだと簡単に想像出来る。


 「………あれ」


 はた、と俺は思いつく。


 「この学校って、学祭ないんですね」
 「ガクサイ?」


 俺のひとり言に、全員が反応した。


 「はい。学祭……ぁ、学校祭です」
 「何それ?」




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