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災厄の元凶
 
 
 テストは無事終了。

 相変わらずの生徒会室。紅茶がアイスからホットに変わって、真白いシャツが学園の生徒たちの腕を覆い隠す。もういつの間にか秋が来ていた。


 「冬休みまで、特に大きい行事もないんですか?」


 これから先は目立った行事もないのかと、紫先輩に尋ねる。
 一学期の新入生歓迎会シーズンは、慌ただしかった記憶がある。俺が生徒会の仕事に慣れていなかっただけかもしれないけれど、新歓が終わった頃には他の生徒会役員もぐったりとしていた。
 行事がないならその分仕事は少なくて、俺としては結構だ。仕事は嫌いじゃないけれど、こうしてのんびり、生徒会のメンバーでお茶を飲む時間が一番好きだから。ずっと休憩していたいとさえ願う。


 「うーん。どうだろう」


 紫先輩は、さっきから時計をちらちらと気にしている。クッキーにありつく近江先輩はまったく気にならないようだけれど、大倉先輩はそんな紫先輩に気づいたらしく、普段は眠そうに細めている目を珍しく見開き、紫先輩を見ている。
 そんな大倉先輩と視線が合うと、先輩はこてんと首を傾げて、テーブルに載ったカップケーキに手を伸ばした。何故紫先輩が時計を気にしているのか、分からないから気に留めないことにしたようだ。

 生徒会役員は、気にし無さ過ぎな面があると思う。

 紫先輩の、答えになっていない解を捨て置けず、俺は口を開いた。


 「どう、ってどういう意味―――……」
 「てめぇら何休憩してんだよコラ」


 その言葉は、例によって司の声に遮られる。


 「おかえり司。遅かったね」
 「俺が働いてるときに何休んでんだよ。俺の倍は働け」
 「つーくん遅いんだもん。食べちゃった!」
 「食べること、は生きる。こと」


 全員噛み合っていない。


 近江先輩に背後から覆いかぶさるようにしてクッキーを奪い、キャンキャン騒ぐ先輩を軽くあしらう司。大人と子供のように見えるけれど、実際どっちも子供だ。
 呆れて眺めていると、そんな司と目が合う。身体がぎくりと強張る俺に反して、司は何故か得意げな顔で笑い、


 「認可貰って来た」


 向かい側のソファに座る俺に、ぴらりと一枚の紙を差し出す。
 視界に広がる真っ白な紙に肩の力を抜き、右手を伸ばしてそれを受け取った。


 「今日中には教師全員に伝わるから。明日の朝礼で発表して完了」
 「へぇ。あの理事長がよく許可を出したものだね」
 「適当なこと言って騙した」
 「…………。まぁ、いいんじゃない。たまには娯楽があっても」


 はぁ、とため息を吐く紫先輩に、「何があ?」と小首傾げる近江先輩。
 しかしその紫先輩に答える気配がないため、近江先輩は頬を膨らませながら俺の側に寄って来る。手にした資料はすでに大倉先輩が覗き込んでいる。

 学園の校章――理事長の「認可」を表す――が捺された書類。
 そのタイトルに掲げられたのは、


 「学園祭?」




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