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こんな狭い空間で勃発する争いを眺めながら、僕はもう一口お茶を飲む。争いを鎮めてもよいのだが、飲み切ってからにしようと思ったのだ。
環先輩はあれだけ「酸っぱい」と文句を言いながらも飲み干していたらしく、「もう一杯」とカップを差し出す。そんな不遜な態度の環先輩に、美作副会長も「自分で淹れて」と言い放った。
蜂蜜も足してみよう。
テーブルに手を伸ばそうと屈むと、西園寺会長とばっちり目が合ってしまった。にやりと笑うその顔に、早く紅茶を飲み切らなければと気持ちが焦る。騒ぎが収束してしまえば、生徒会室にいる意味はない。つまり紅茶が飲めない。
「桐生がぐちゃぐちゃうっせぇから、ここは木崎に決めてもらうか」
ニヤニヤと笑いながら近づく会長。
僕は蜂蜜をティーカップに垂らし、「そうですね」と答えた。
「風紀の判が捺してあるのは事実です」
「木崎!」
「だよなぁ、ほら見ろ桐生」
「ですが、まったく関係のない書類を押しつけ、直視されたくない問題から目を逸らさせるやり方はどうかと思います」
「…………」
ぐっと一気に紅茶を飲み干した。
西園寺会長の背後には、不安げな嘉之先輩と、明らかに顔を引きつらせた晴一がいる。次に僕が発する言葉の予測が付いたのだろう、僕は晴一に笑ってみせた。
「ですから、西園寺会長が行事立案に至る発端――…つまり市川に判断を委ねれば宜しいかと」
僕が名前を呼ぶと、市川は「はっ!?」と背筋を張らせた。未だ空想していたのか。この騒ぎの中でそんな態度が取れるのならば、将来は安泰だ。
「何が!?」
「………そこから聞いてなかったのかお前」
僕の言葉に、市川はうっと息を詰まらせる。
全員が市川に注目している。―――ということもなく、環先輩は呑気にお茶を飲んでいるし、チカ先輩は近江先輩から逃れようと必死だし、大倉先輩はソファの影から出てこない。
西園寺会長、嘉之先輩、晴一が市川に注目するなか、美作副会長だけがニコニコと笑いながら僕を見ている。目ざといな、と僕は心の中で舌打ちをする。
「学園祭。お前はどう思う」
僕が問うと、市川は「うー……」と思案した。
場は市川に委ねられたように見える。が、西園寺会長が指名した以上、決定権は僕にある。
市川の言葉をどう引き出すか。市川が話を聞いていなかった以上、それは僕の質問に掛かっているのだ。奔放な西園寺会長はともかく、その会長をサポートする役職に就くだけのことはある。
市川は言葉を選びながら、ゆっくり紡いでいく。
「やっぱ俺個人が言ったから、って理由で学園全体巻き込むのは、罪悪感………とか、あるけど」
「あぁ」
促すように軽く言って、紅茶をポットからもう一杯注いだ。
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