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 西園寺会長と嘉之先輩が向かい合っているその間、近江先輩は「チカちゃんだぁ!」と無邪気に駆け寄り軽くあしらわれ。環先輩はテーブルに載ったカップケーキをつまみ。大倉先輩は関わりたくないとでも言いたげに応接セットのソファの影に隠れ。市川は顔を赤らめたり眉を寄せたりと忙しそうだ。唯一まともであろう晴一は、仲裁に入っているため手が空いていない。なかなか混沌(カオス)である。


 「つーか風紀の判押してあんじゃん」
 「あれはうちの後輩が寝ぼけて捺したものだ。従って無効だ」


 嘉之先輩の解に、「いやそれは無理があるだろ」と晴一。


 「いや、もう無理。無理なもんは無理」
 「小学生かてめぇは」
 「あの判は風紀委員のものではない」
 「それも無理だから」
 「………何だと?」
 「信じるのかよ」
 「一箇所だけ削れがある。本来の風紀の判とは異なる――…従って無効だ」
 「探偵小説?」


 律儀に突っ込みを入れる晴一を横目に、僕は美作副会長に勧められた通りお茶をいただくことにした。勧められずとも応接セットで足を組み、お茶を飲む環先輩は例外だ。


 「知ってると思うけど、生徒の申請に対する認可は生徒会で出している。じゃあ生徒会の申請はと言うと、生徒会と同等かそれ以上――…つまり、職員か風紀委員から認可を貰わなくちゃ理事会への申請は出来ないんだ」


 ティーカップを受け取り、「存じています」と答える。
 香りはローズヒップ。正直苦手だと思いつつ口に含むと、意外なほど甘みがあって抵抗なく飲むことが出来た。


 「で、風紀の認可が欲しくて」
 「正攻法では嘉之先輩が首を縦に振らないと、そう考えたんですね」
 「よく分かったね」


 ニッコリと笑う美作副会長に、「酸っぱいぞ」と顔をしかめる環先輩。こうして二人が揃うと、似ているようで似ていない………ようで、やはり似ている。表情筋の動かし方が違うようで、顔の構造だけ取れば瓜二つとも呼べるだろう。僕と市川もそうなのだろうかと、なるべく距離を取るため椅子に深く腰掛けた。僕の隣は環先輩で、向かいが美作副会長。対角線上に、市川がいる。
 美作副会長は「なら飲まなくていいよ」と毒気のある笑顔でそう宣言し、僕に向き直った。


 「大量に託した書類の中に一枚だけ紛れさせたんだけど。気づいた?」
 「気づきましたが………」
 「ぅん?」
 「面倒なので、放っておきました」


 僕が言うと副会長はきょとんとし、それから盛大に笑った。


 「ふふふ。そう、面倒だから、ね。最初から木崎君に頼めばよかったかな」
 「何故弟の僕に頼まないんだ!」
 「環に言うと上ノ宮に流れる可能性が高いからだよ」


 美作副会長の言葉に、チカ先輩は「勝手にセットにしないでくれる!」と叫ぶ。が、後ろから近江先輩に抱きつかれ、そのまま床に倒れた。反発しているようだが、満面の笑みを湛えた近江先輩に分があることは明らかだった。天然は、偉大だ。


 「つーか何で急に学園祭だよ。面倒くせぇ」
 「晶がやりたいって言ったから」
 「………頭冷やせよ」
 「愛だろ?」


 ふふんと笑う西園寺会長に、晴一は容赦なく蹴りを入れた。


 「痛ってぇ!!」
 「何"良いこと言った"みたいな顔してんだお前は! 巻き込むな!!」




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