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「………行くぞ」
学園のトップ、俺様生徒会長様も、実の姉には逆らえないらしい。
踵を返す司に慌ててついて行くと、「また後でね」とエレナさんの声が背中から聞こえた。
ちらりと振り向いたとき、エレナさんが差し出していたカードが黒かったのは、見間違いだと思う。
思いたい。
◆
速足な司の後を、小走りで追う。
身長が憎い。当然足の長さも、歩幅も違ってくる。
ショウウィンドウに映る俺たちは、余裕で頭一つの身長差はある。
すれ違う女の人が、ディスプレイのワンピースを見て、それから映る司を見てぽっと頬を染めた。
「司」
名前を呼ぶと、司は振り向いて足を止めた。
「ん?」
「………やっぱいい」
追いついて並び、また歩き出す。
「大高坂のジジィが」
「え?」
唐突に話し出した司に、気の抜けた声が出た。
見上げた横顔は、真剣に前を向いている。
「俺のこと気に入ってる。………大高坂 実里(ミノリ)の誕生祝賀会なんて言ってるが、実際は財界の社交場だ。パーティの間は、お前に構ってやれないから」
おいちょっと待て。
じゃあ俺は何で来たんだよ。
「知らねぇよ。姉貴が連れてきたんだろ」
「はぁ!? 無責任すぎだろ!!」
「………俺に責任ないだろ」
「正論言うなよ!!!」
そんな、いきなり「財界の社交場」とやらに連れて来られて放置とか、勘弁してくれ。
しかし司に言っても仕方のないことで、俺は行き場のない思いでうーあー唸った。そんな俺を哀れに思ったのか、司はため息を吐く。
「姉貴が遅れて来るはずだから、何とかやるだろ。あいつは上客でもないし、軽く挨拶するだけで空くはずだ」
「………何で俺連れて来られたんだろ」
「知るか。姉貴の考えてることなんか」
不意に司が歩みを止めた。
その視線の先にあるのは、俺でも名前を知ってるほどの超有名ホテル。正面のロータリーには、黒塗りの車が何台も何台も連なっている。
「………まさか会場って」
「ここだ」
見るからに金持ちそうな、スーツやドレス姿の人たちが吸い込まれていく。
本当に、何で俺がここにいるのだろう。
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