再び
司の部屋は、特待寮の一番奥にある。
もっと詳しく説明したいところだけど、複雑に曲がりくねった寮の地図を、俺は未だに頭に描けない。だから漠然とした表現で勘弁して下さい。
ドアチャイムの上には部屋番号。司の部屋には、あまり来たことがない。大抵司の方から、木崎か俺の部屋にやって来る。だから部屋番号が俺の記憶にある司の部屋番号と一致しているか、実ははっきりとはしていない。
どうせ間違ってても同じ学園の生徒だし、いいか。軽い気持ちでチャイムを押して、はたと思い留まる。
………いや、よくない。上ノ宮先輩とかだったら、俺は死ぬ。多分死ぬ。
「あ」
サァと顔から血の気が引いたそのとき、ガチャリ、とドアが開いた。
そこには生徒会長には相応しくない赤毛があって、俺は安心する。
「つか、」
安心していると、ドアがパタンと静かに閉められた。
「……………」
え、シカト? シカトですかこの野郎?
「無視すんなバカ! 司!」
イラッとして右足に渾身の力を込めた。高く上げ、ドアに向かって思いきり打ちつける。
ガンッ、と鈍い音が―――したと思えば、いきなりドアは開いた。俺の渾身の力は、吸収されずそのままドアを開けるための力に加わる。
「ぅわっ!?」
「い゙っ………てぇなこの野郎!!」
今度こそガンッ、と――先ほどよりも鈍く生々しい――音がして、ドアは司の額に勢いよく突撃した。
「いや、これはその」
「腫れてね?………マジで痛ぇ」
「悪い! うわ、赤くなって…………って近い!顔近い!!」
「身体で詫びろよ」
「ふざけんな!大体お前が………」
「はァい、そこの二人、いちゃつかないの」
ここにいるはずのない、柔らかくも芯のある声がして、俺は言葉を止めた。
「司も。最初にドアが開いた時点で、アキちゃんだって分かってるから。隠しても無駄よ」
チッと舌打ちをして、司が離れる。
視界を遮る影がなくなり、玄関に立っていたのは、長身細身のパーフェクト美女。
「………エレナさん?」
「お久しぶり」
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