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 生徒会室に行く道すがら、昨日の話を聞いた。


 昨日の昼休み、僕が迎賓室にいた時に発生した事件は、古賀学園生徒会長・西園寺 司と市川の衝突だったらしい。

 市川と文字通り衝突した西園寺会長は市川に暴言、市川は会長に言い返す。
 俺様何様生徒会長様はそこで市川に掴みかかり、口論に発展。
 その場は桜庭先輩が収めたが、市川の態度を不服に思った生徒会親衛隊が動いた―――…。


 「……親衛隊?」
 「生徒会っつーのは大体が顔で選ばれてる。まあ実力も考慮してるんだけど。顔がいいと、ファンが大勢つく。それが組織化したものが親衛隊だ」


 桜庭先輩いわく、どうやら先ほど僕が気絶させた小柄な生徒の中に、親衛隊の隊長がいたらしい。
 ワカメごときに隊長が出張って行くのかとやや驚いたが、古賀学園において生徒会長に口答えする者など生徒会メンバー以外には居らず、市川が生徒会長に歯向かったのは、それはもう一大事だと言う。

 市川も高等部からの外部編入生らしく、その辺りの暗黙の了解が理解できてなかったんだよな、と桜庭先輩は言った。


 生徒会室は北校舎三階にあった。


 「てめぇ司!」


 桜庭先輩はノックもせず、いきなり生徒会室の扉を開けた。


 「ぁ? 何だ晴一か」
 「テメェんとこの親衛隊がちゃんとしねーからうちの仕事が増えんだよ!いっぺん死ねっ!」


 入るなりズカズカと部屋の奥に進む先輩。
 それに続いていいのかと入口付近で思案していると、


 「あれ? 桜庭の連れかい?」


 異国の王子に話しかけられた。

 長めの金髪に深い緑の目、色白の肌。顔のパーツ全てが収まりよく整った顔が、ニコリと品良く微笑んだ。
 どれくらい異国の王子かと言えば、もう、本当に異国の王子です申し訳ありませんでした、というくらいに異国の王子然とした風貌の王子っぷりである。「王子様のカレー」などメではない王子具合に、僕は「はぁ」と間抜けな返答を漏らした。


 「へぇ。あ、もしかして編入試験満点合格の木崎君か」


 テストの結果については職員間のみの機密、などと言っていた叔父の顔を、僕は思い出していた。個人情報が駄々漏れではないか。


 「一応満点でした」
 「やっぱり。お噂はかねがね聞いてるよ」


 さあ座って、と笑顔で進められ、僕は応接セットのソファに腰掛けた。
 異国の王子は生徒会副会長で、美作 紫というらしい。

 「昨日は二年の上ノ宮と一緒にいたらしいね」
 「え?」
 「この学園で風紀委員会は有名人だ。君もちょっとした噂の一つだよ」


 そう言って優雅に笑った美作副会長は、「お茶を淹れようか」と立ち上がった。
 普段は罪悪感などあまり抱かない僕だが、王子に給仕をさせるなど畏れ多く、柄にもなく「すみません」と言ってしまった。


 「つーか何。それ晴一の?」


 生徒会長の声に目を遣ると、ばっちり視線が合ってしまった。
 「それ」とは僕のことであり、どうやら話題は僕のことらしい。


 「は!?違ぇよハゲ」
 「ハゲてねぇよ」
 「てめぇの爺さんハゲじゃねーか。あいつは新しい風紀だから手出すなよ」


 風紀委員ではありません。




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あきゅろす。
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