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 「僕は待機しているから。ヨロシク」


 さらりと言うチカ先輩に追い立てられるようにして、迎賓室を出た。
 どうやらこの書類はチカ先輩が環先輩に任せたものであり、その環先輩が放置していたものであるようだ。


 「………結局俺の仕事量は変わらないじゃないか」


 げっそりと生気を吐く桐生先輩と一緒に廊下を歩く。


 「今後のことも考えて、チカと環に託したんだが……」
 「今後、ですか?」


 問い掛けるも、先輩は「失礼します」と前を向き発声する。いつの間にか職員室に着いていたようだ。何を話すつもりだったのだろうかと、思いながら後に続く。
 どうやら書類は第二学年の主任、上條先生に届けるものらしい。


 「こんにちは、先生」
 「桐生君……と、木崎君ですか」


 上條先生と会話をするのは、夏前のテスト盗難事件以来だ。教科担任でもないため、あれ以降は廊下ですれ違い会釈をする程度にしか接触はしていない。


 「何かありましたか?」
 「いえ、こちらの書類をお届けしに」


 柔和に笑う桐生先輩から書類を受け取る。上條先生はそれに目を通すと、「あぁ」と眉を上げた。


 「備品の申請書ですね。数が足りないと武宮君が騒いでいました」
 「申し訳御座いません。手違いで生徒会の方へ渡っていたようで」


 にこやかな表情のまま、さらりと虚実の証言を吐く桐生先輩に驚くも、余計な口を開かぬよう黙っていることにした。


 「そういえば、この間の小テスト」


 上條先生は思い出したように言うと、机の引き出しを開けた。すっきりと整頓された机上に、ぴっちりと角まで揃えられた書類は、先生の本質を表しているようにも思えた。


 「満点でしたよ。桐生君」
 「先生のご指導のお陰です」
 「今度の小テストも期待していますよ。最近は美作君も更に伸びてきていますから」


 美作副会長のことだろう。夏前から表情が軽くなったように思えるため、何かが吹っ切れたのかもしれない。


 「教員の中には賭けをする輩まで現れまして。嘆かわしいことです」


 はぁ、と忌々しげに言う上條先生。
 視線を辿れば、そこには派手な色彩の頭と、真っ白に輝く衣が見える。


 「美作君だと思うけどなー」
 「今度は絶対桐生だろ」
 「それで嵐は前回負けてるじゃない」
 「うっせーな。俺が勝ったら二度とお前とはしねぇよ」
 「じゃあ僕が勝ったらやりたい放題?やったね」
 「何でそうなる!!」


 担任の鳴海先生と、養護教諭の設楽先生だった。





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