[通常モード] [URL送信]
--03
   
 
 「どんな人なんだ?その方は」


 晴一の物言いが引っ掛かり問うと、二人は顔を見合せ目を逸らしあった。
 わずかな沈黙の後、桐生先輩から口を開く。


 「………一言で表すなら、喧しい」
 「テンションが高い」
 「お節介。だ」


 何かあったのだろう。
 思い出すように連ねるその人物の特徴は、褒め言葉とは表しがたい。


 「俺たちの一つ上だ。彼の手によって、俺たちは風紀委員会に入った」


 忌々しさと、諦めと、懐かしさと。
 様々な感情が入り交じったような、ため息を桐生先輩が吐いた。


 「そうなんですか」
 「確か俺は………担任と偽って校内放送で呼び出されたな」
 「…………俺はカード盗られた」


 どうやら風紀委員会へのスカウトは、半ば強引な方法で行われるのが伝統のようだ。僕もまた、拉致と言って相違ない方法で風紀委員会へ入ることを余儀なくされた。


 「風紀委員会創立時のメンバーだ。委員としての力量は有り余るものだったが、何せ喧しい」
 「五月蝿い」
 「面白ければ何でもあり、と言った人だ。デスクワークが大嫌いで、おかげで俺が被害者だった」


 桐生先輩の立ち位置は、今に始まったものではないらしい。
 何でも桐生先輩と晴一が入学した当時の第三学年――つまり風紀委員長もデスクワークを嫌っていたらしく、先輩は第一学年の頃から教師陣への報告や書類化を任されていたという。


 「環とチカを連れてきたのも田中先輩だったな」


 けれど、懐かしむような表情で、先輩は少しだけ笑った。


 「田中先輩?」
 「その人の名前だ」


 晴一がガサガサと書類の山を漁る。


 「ほら、写真あった」


 ひょい、と中から出てきたのは、青色のファイルだった。表紙には「風紀委員会活動記録」とある。


 「何が活動記録、だ。こんなとこに私物残して」


 苦笑する晴一もまた、本気で据えかねている様子でもない。




[←][→]

3/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!