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 急に言葉を遮られ、顔を上げた。

 有坂と委員長の背後に、知らない人が立っている。ネクタイがエンジだから、第三学年の先輩だ。肩幅が広くてガタイがいい。
 その鋭い目は俺と木崎を見据えている。でも俺はこの人を知らず、隣の木崎も黙々とまぐろを食べている。


 「あ」


 しかしその後ろに見知った人がいて、俺は声を上げた。


 「斑目先輩」
 「こんにちは、市川君。……と、木崎君」


 大倉先輩の親衛隊隊長、もとい幼馴染みの斑目 圭人先輩だった。親衛隊隊長の中で唯一、第二学年の生徒であり、この先輩のアドバイスを受けて、俺は自分の親衛隊に認可を出した。
 その後も廊下ですれ違ったり、大倉先輩と一緒にいるところに遭遇したりと、よく顔を合わせている。

 しかし、木崎も斑目先輩と知り合いだとは。こっそり尋ねれば、「風紀委員の関係で知り合った」と答えられた。何なの木崎、その人脈はどこで形成されてるの。


 「圭人、知り合いか?」


 ガタイのいい先輩も疑問に思ったらしく、斑目先輩に問うた。


 「どなたですか」
 「岩淵 努。一般寮の寮長だ、天才君」


 そういえば一般寮には、いわゆる風紀委員のような存在があると聞いたことがある。
 木崎は岩淵先輩の解に、微かに眉を寄せた。それは近くにいる俺にしか分からない程度で、有坂も委員長も岩淵先輩も、その変化には気づかない。


 「木崎です」
 「第一学年の特待生だろ? 頭脳明晰、容姿端麗の外部生。有名人だ」


 何か、引っかかる言い方だ。
 俺はムッとして岩淵先輩を見る。隣にいる斑目先輩も、嫌そうに顔を歪めていた。


 「まーま、ぶっちー。そんな凄むなよ」


 何となく嫌な空気が流れる、その間を割って入ってきたのは、おちゃらけたような明るい声だった。


 「駒井先輩?」
 「よっ、市川ー。と、風紀クンに白薙じゃん」


 第三学年Sクラスの委員長、駒井先輩だった。司と仲が良いらしく、定例委員会で顔を合わせるたびに俺もよく話している。

 クラス委員つながりで、今度は委員長も知り合いらしい。
 木崎がどうして駒井先輩と顔見知りなのかは気になったけれど、どうせ「風紀委員会で」と言われるだけだから黙っておくことにした。


 「駒井先輩、何でここにいるんですか?」
 「え? だって俺副寮長だし」
 「えっ!?」
 「ついでに言うと、圭人も副寮長」


 「不本意ですよ」という斑目先輩に、ケラケラと笑う駒井先輩。


 「………駒井。俺は寮の規律を乱すこいつらを、」
 「てか騒がしいのはこいつらじゃなくて周りでしょ」


 駒井先輩の発言に、岩渕先輩はうっと詰まった。
 確かに俺たちは夕飯を食べていただけで、注目したり囁き合っていたのは周囲の生徒たちだ。考えなしに一般寮へ来たことは勿論悪いと思ってるけど、いきなり現れて一方的に責められるのは納得いかない。


 「風紀の上ノ宮に振られたこと、まだ根に持ってんの?」
 「違う! 断じて違うッッッ!!!」
 「上ノ宮はそりゃ美人だけどさー、愛想なさすぎだし。大体あの美作弟がライバルならお前に勝ち目はないって。諦めなよ」
 「上ノ宮の悪口を言うな!! そして美作の名前は出すな!!!」




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