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--05
 
 
 「何の話してるんだ?」


 玄関でしばらく話し込んでいたら、奥から委員長が出てきた。
 こっちは有坂と違って、制服から私服に着替えている。Tシャツにカット素材のラフなパンツ。私服じゃなくて、もしかしたら部屋着かもしれない。


 「僕の名前の話」
 「あぁ。めぐは変わってるかも」
 「委員長の苗字も変わってるよな」


 表札に書かれた文字は、俺の見たことのない名字だった。もっとこう、慎ましやかな名字にしろよ皆。西園寺とか美作とか、豪華すぎ。俺を見習え。


 「あれ、何て読むんだ?」
 「しらなぎ」
 「へぇ。何かカッコいい」


 俺が感心しながら再び靴を脱ごうと腰を屈めると、


 「でも、苗字では呼ばないで欲しいんだ」


 いつも余裕のある委員長の声が、少し強張ったように感じた。
 顔を上げたその先の、委員長の表情は苦笑まじりのものだった。


 「え?」
 「苗字。気に入ってないから。呼ぶなら名前にして」
 「でもカッコいいの、に゛っ!?」


 食い下がる俺の足に激痛が走り、顔が引き攣った。
 隣に立つ木崎を睨むと、木崎は涼しい顔で「やはり部屋の造りから違うんだな」とか言いながら俺の脇を通り過ぎていく。


 「この学園は、苗字で呼ばれたくない生徒って多いよ」


 先に室内へ消えていく委員長の背中を見遣り、有坂はこそっと俺に囁いた。


 「そうなのか?」
 「家業が気に入らなかったり、親との仲が良くなかったりとかね。名字で呼ばれたくないって言われたら、大人しく従った方がいいよ」


 そういえば紫先輩も、苗字で呼ばれたがらなかった。紫先輩は両親との仲があんまり良くなかったはずだ。
 金持ちなんて言っても、色々あるんだなと思う。




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