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エレベーターが六階に着いた。
入れ違いにエレベーターの中へ向かう生徒をかわしているうちに、木崎はスタスタと歩いて行ってしまう。
「ちょ、木崎待ってー」
慌てて足を早め追いついた。
特待寮と比べて、壁紙や床は割とシンプル。その代わり、休憩所や自販機が点々と存在する。
初めて入る一般寮にキョロキョロする俺に反して、木崎はしっかりと歩いていく。
「道、分かるのか?」
「風紀で何度か来たことがある」
「…………へぇ」
本当、風紀委員会って何やってるんだろう。
道も分からないままついていくと、木崎はあるドアの前で足を止めた。『有坂 巡・白薙 北斗』。いつの間にか、有坂と委員長の部屋の前まで来ていたらしい。特待寮とは違って、部屋番号の下に入寮者の名前が提げられている。そもそも特待寮には、部屋番号自体が存在しないのだけれど。
こいつ何で部屋番号知ってんの、と思っていたら、「今朝委員長に聞いた」らしい。無表情な横顔で、インターホンを押した。
「市川!」
すぐにドタドタと足音が聞こえ、勢いよくドアが開いた。
そこには怒ったような顔の有坂がいる。
「寮に着いたら電話してって言ったじゃん」
「………あ」
木崎がガンガン進むから忘れてた。
「悪いな有坂」
「いいよ、もう仕方ないし。とりあえず上がって」
俺の代わりに謝罪した木崎に、有坂は少しだけ眉間の皺を緩める。お前何で木崎には優しいの?
「そういえば有坂の下の名前、珍しいな」
ローファーを脱ぎながら、さっき思ったことを口にする。
表札の名前。「じゅん」ではなく「めぐる」だと、首を傾げる俺に木崎は言っていた。
「そう?」
「うん。初めて聞いた」
「この学園って、珍しい名前の生徒が多いから」
言われてみれば確かに。
生徒会メンバーも「濃い」よなぁ………唯一、木崎と晴一さんが普通だと思いつくけど、それでも珍しい部類だと思う。太郎とかいないんか。
「将来社長とかになったとき、名前が被るといけない、とか思うんじゃない?」
馬鹿馬鹿しいよね、と有坂は肩を竦めた。
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