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放課後、寮へ繋がる門――東中門で木崎を待つ。
委員長と有坂は一足早く寮に戻っている。有坂が「部屋の片づけして掃除機掛けて、お菓子の用意しなきゃ!」と蒼白し慌てていたのを思い出す。そこまでビビらなくてもいいんじゃないか。
木崎が何故いないかというと、迎賓室に寄っているからだ。風紀委員長の桐生先輩に了承を貰いに行っているそうなんだけど、却下されたりとかないよな。流石に有坂が不憫すぎる。
「あ、木崎ー」
壁に凭れてそんなことを考えていると、遠くから木崎の姿が見えた。自分の存在を知らせるように、ひらひらと手を振る。
「どうだった?桐生先輩」
「………あぁ」
俺が聞くと、木崎は複雑そうに眉を寄せた。
「やけにいい笑顔で送り出された。それも委員会の先輩皆から」
「………あ、そう」
愛されてるなお前。
一階から寮に入るのは、実は入学式以来だったりする。特待生専用寮は校舎と繋がっているから、わざわざ外に出たりする気が起きないのだ。
外に出ればむわっとした熱気が襲い、シャツが肌にまとわりつくようだ。まだ夏は終わっていなかったな、とシャツの襟首をパタパタとさせ思う。
「部屋、何階」
「えーっと、確か六階」
「確か、じゃ駄目だろう」
「じゃあ六階」
「…………」
丁度着いたエレベーターの、「6」のボタンを押した。中には誰もいなく、また乗ってくる生徒もおらず、木崎と俺の二人きりだ。
「ねー木崎」
「何だ」
「有坂、いいやつだよ」
別に木崎が有坂を嫌ってる、ってわけではないんだけど。
有坂の方が木崎に怯えてるようだから、木崎の方から有坂と仲良く出来たらいいんじゃないかな、なんて。
「…………何。急に」
「デスヨネー」
「別に有坂が嫌なやつだと思ったことはないが」
「だって睨んでるらしいじゃん、いっつも」
「………あれは、」
そのとき、エレベーターが六階に着いた。木崎は口をつぐみ、それ以上を話すことを止めた。
チン、と音がしてドアが開く。
「分かってるよ、ちゃんと」
ドアが開く直前、俺は木崎に聞こえるように言った。
言葉の続き、口にしなくても分かるよ。顔を覗き込んで笑うと、木崎はふいと顔を逸らした。お、照れてる照れてる。
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