[携帯モード] [URL送信]
--03
  
 
 ◆


 放課後、寮へ繋がる門――東中門で木崎を待つ。
 委員長と有坂は一足早く寮に戻っている。有坂が「部屋の片づけして掃除機掛けて、お菓子の用意しなきゃ!」と蒼白し慌てていたのを思い出す。そこまでビビらなくてもいいんじゃないか。

 木崎が何故いないかというと、迎賓室に寄っているからだ。風紀委員長の桐生先輩に了承を貰いに行っているそうなんだけど、却下されたりとかないよな。流石に有坂が不憫すぎる。


 「あ、木崎ー」


 壁に凭れてそんなことを考えていると、遠くから木崎の姿が見えた。自分の存在を知らせるように、ひらひらと手を振る。


 「どうだった?桐生先輩」
 「………あぁ」


 俺が聞くと、木崎は複雑そうに眉を寄せた。


 「やけにいい笑顔で送り出された。それも委員会の先輩皆から」
 「………あ、そう」


 愛されてるなお前。

 一階から寮に入るのは、実は入学式以来だったりする。特待生専用寮は校舎と繋がっているから、わざわざ外に出たりする気が起きないのだ。
 外に出ればむわっとした熱気が襲い、シャツが肌にまとわりつくようだ。まだ夏は終わっていなかったな、とシャツの襟首をパタパタとさせ思う。


 「部屋、何階」
 「えーっと、確か六階」
 「確か、じゃ駄目だろう」
 「じゃあ六階」
 「…………」


 丁度着いたエレベーターの、「6」のボタンを押した。中には誰もいなく、また乗ってくる生徒もおらず、木崎と俺の二人きりだ。


 「ねー木崎」
 「何だ」
 「有坂、いいやつだよ」


 別に木崎が有坂を嫌ってる、ってわけではないんだけど。
 有坂の方が木崎に怯えてるようだから、木崎の方から有坂と仲良く出来たらいいんじゃないかな、なんて。


 「…………何。急に」
 「デスヨネー」
 「別に有坂が嫌なやつだと思ったことはないが」
 「だって睨んでるらしいじゃん、いっつも」
 「………あれは、」


 そのとき、エレベーターが六階に着いた。木崎は口をつぐみ、それ以上を話すことを止めた。
 チン、と音がしてドアが開く。


 「分かってるよ、ちゃんと」


 ドアが開く直前、俺は木崎に聞こえるように言った。

 言葉の続き、口にしなくても分かるよ。顔を覗き込んで笑うと、木崎はふいと顔を逸らした。お、照れてる照れてる。




[←][→]

10/20ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!