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首筋を這う指先。
痕、っていうのは多分首を絞めた痕なんだろうけど、それは木崎が俺に付けたんだよ。何でそんな他人事なの。
それでもその指の優しさに、俺はされるがままになってやることにした。首絞めた後で優しさ見せてくるって……お前はDVか。DVなのか。
俺がぼんやりと眺めているうちに、その手は離れて行った。やっぱり、今日の木崎は、変だ。昨日、何かあったのかな。
「…………朝から濃厚だね」
その様子を見ていたらしい、俺の机に肘を突いた有坂が、ぽつりと呟いた。
「のッ……!?」
「二人って付き合ってるの?」
「ない。絶対ない」
ありえない。殺されます。
「それよりもさ、木崎」
百パーセントの心を込めて断言すると、委員長が思いついたような口調で言った。
「今日、市川が俺たちの部屋に遊びに来るんだけど」
「俺"たち"?」
「そ。俺と有坂」
木崎にちらりと見られ、有坂は首を縦にブンブン振った。
怖いんだな。昨日の今日で、見たのが首絞めDVシーンだし。
「良かったら木崎も来ないかと思ったんだ」
「………委員会がある」
「一日くらいサボれないの? ってこいつが言ってたよ」
「いいいい言ってない! 言ってない!!」
こいつ、と委員長に指さされ、今度は全力で首を横に振る有坂。
お前昨日俺に言ってたじゃん。木崎には言わないのか。木崎なら言わないのか。
「………あぁ、別にいいけど」
意外なことに快諾した木崎は、鞄を探り携帯を取り出した。
「本当!?」
「あぁ。一応桐生先輩に了承を貰う形になる」
「え、あ、うん」
意外な返事に、戸惑いを隠せていない有坂。
まさか本当にオッケーが出るとは思わなかったんだろう。俺もそう思ったし。
ポチポチと携帯を弄る木崎に気付かれないように、有坂と顔を見合わせた。未だに目を見開く有坂に、俺は肩を竦める。
委員長はやっぱり委員長で、木崎の返事を予測していたみたいにニコニコと笑っていた。やっぱり只者じゃないのかもしれない。
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