おうちへごー
次の日、何と木崎は授業に出てきた。
熱があったらしいけど、それも一日で治まったと言う。恐るべし木崎。風邪菌も逃げ出す木崎。あなたのお家に木崎。あ、やっぱり怖いからいいです。
「本当に治ったのか?」
「あぁ」
「ノート見る?」
「あぁ」
「あ、課題出てたんだった」
「あぁ」
「……あ、UFO」
「あぁ」
「………バーカバーカ。おたんこなす」
「あぁ」
「…………」
ぼーっとしてる。
一応話しかければ返っては来るんだけど、ぼーっとしてる。こんな木崎は初めて見た。いつもクールで引き締まってる木崎しか見たことがないから、どうしていいんだか分からない。
分からないから、頬杖をつく木崎の横顔を眺めることにした。睫毛長いけど、眼鏡に当たって邪魔じゃないのかな。あ、まばたきした。ちょっとレンズに当たった。
隣の席から木崎の観察をしていたら、ふとその視線が、続いて顔がこちらを向いた。
「誰が馬鹿だと?」
「うぎゃあああああああ!!?」
時間差かよ!?
にゅっと伸びてきた手に首を掴まれ、そのまま力を込められた。
つまり首を絞められてる。冗談とかスキンシップとかじゃなくて、マジで絞まってる。
「おーい木崎、市川が死ぬぞー」
若干霞んだ視界の端に見えたのは、木崎を止める委員長と、怯えてこっちを見る有坂だった。
その委員長の制止が効いたのか、俺は解放された。ぐでっと力が抜けて、机にしがみつく。
「おはよ、木崎」
「………あぁ」
「朝から絞殺なんて爽やかじゃないだろ。穏便にやらなきゃ」
………何で普通に会話してんの。俺死にかけてるんだけど。
唯一有坂が「大丈夫?」と心配してくれた。うん、大丈夫じゃないわ。冷や汗出てるし。
「元気そうで良かったよ。欠席分のノート、コピー取ったから良ければ使って」
「あぁ。ありがとう」
委員長が木崎にノートのコピーを……って、さっき俺が見せるって言ったのに!
もういい。今日こそ友達辞めてやろう、と決意すると、木崎の白い手がすっと伸びてきた。
さっきのこともあって、俺は身を固くさせる。
「痕。残ってる」
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