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「あんま深く考えなくてもいいんじゃねえの」
司の声に、じゃがいもをほぐす手を止めた。
「本当に好きだって思ったなら、そのときは理屈とかねぇだろ」
「うーん………」
いや、ごめん。そんな真剣に悩んでたわけじゃなくて、ぽろっと出てきただけなんだ。今はじゃがいもほぐすことに精一杯だから、それはもういいんだ。
「まあ何でそんな考えてるか知らねぇけど」と言いながら、司はカレーをスプーンですくった。カレー似合わないな、お前。
「俺のことも真剣に考えろよ?」
そう、こいつも俺のことが好きなんだよな。
気づいてたのかもしれない。知らないふりをしていたのかもしれない。でももう誤魔化せない。
「そのつもり」
だからちゃんと考える。
茶化したりはぐらかしたりしない、って決めた。司に対しても、司を好きな人に対しても、それが一番いいってことに気づいたから。司の気持ちを受け止めて、それで受け入れられるかどうか、俺なりにちゃんと考える。
でも、今の俺としては、男が男を恋愛対象として好きになる気持ちが、まだ分からない。
第一司が俺を好きだなんて、………未だにちょっと信じられないかも。もっとこう、ほら、可愛い女の子とか選べよ。みたいな。
わざわざ俺じゃなくてもいいじゃん、ていうね。俺庶民だし。男だし。可愛くないし。
「あ」
もんもん考えてたら、言わなきゃいけないことがあることを思い出した。
「もしかしたら明日、生徒会休むかも」
「は?」
「友達のとこ遊びに行ってくる」
木崎が出席したら、だけど。
一応こいつが生徒会の会長なわけだし、伝えておいた方がいいだろう。一応、というか事実会長なんだけど。
空いた二つのグラスに水を注ぎ顔を上げると、
「誰だよ友達って」
苛立たしげな司の顔。
お前俺のことが好きなら、俺に友達が出来たことを祝福しろよ。
「……クラスメイト」
紫先輩の言ったとおりになったな、なんてこっそり苦笑いを零すと、
「わけわかんねぇやつと遊んでんじゃねーよ」
予想通りすぎる台詞が返って来た。
本当に言ったよこいつ。
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