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悩む俺に、「一日くらいサボれないの?」と聞く有坂。
お前、それ紫先輩の前で言ってみろよ。
◆
「いいよ、行っておいで」
返ってきた言葉に、俺は拍子抜けしてしまった。
放課後の生徒会室。「とりあえず聞いて来い」という有坂に言われて、俺は恐る恐る生徒会室の魔王、紫先輩にお伺いを立てた。
「え!? いいんですか!?」
「うん……そんなに驚かなくても」
いや、そんな普通の反応が返ってくるとは思わなくて。
「さすがに今日は無理だけどね」と言われ、アドレスを交換した有坂にメールを送った。「明日なら木崎君も誘ってみようか(・v・)」という返事を確認して、携帯を閉じる。
今日のお茶当番は俺。当番制といっても、紫先輩と俺のローテーション。司と近江先輩、そして大倉先輩には無理だ。
ティーカップに紅茶を注ぎ、ポットの中で余ったお茶を別のポットに移す。念のため自分用のお茶をテイスティングした。ん、美味い。
夏期休暇のバイト以来、お茶の味が格段に良くなった。久良さんと麗さんに感謝しなくてはいけない。
「反対されると思った?」
お茶を渡すと、紫先輩はクスクスと笑いながら言った。
若干気まずくて苦笑いを返す。
「今は生徒会忙しくないから、いいよ。行っておいで」
「あ、ありがとうございます」
二学期の行事予定を確認しながら、紫先輩は紅茶に口をつけた。「上手になったね」と言われて嬉しくなる。
今日は第二学年の授業が長引いているらしく、近江先輩と大倉先輩が不在。司は職員室に行っているから、生徒会室にいるのは俺と紫先輩だけだ。
「僕はね、晶」
カチャリ、とソーサーにカップを下ろし、紫先輩は口を開く。
「晶をほとんど無理やり生徒会に入れてしまったから、不安だったんだ」
「え?」
「生徒会役員、というだけで敬遠されたり、あまりクラスに馴染めなかったりするから」
それは、昼休みに有坂も言っていたことだ。
もしかして紫先輩も、紫先輩だけじゃなくて司も近江先輩も大倉先輩も、少なからずそういう思いをしてきたんだろうか。その口調から、俺はそんなことを考える。
「友達が出来たのなら、凄く嬉しいよ」
琥珀色の瞳が細められ、つられて俺も笑った。
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