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 気まずさを隠すように、注文したうどんをずるずる啜った。


 「まぁいいや。………北斗はさ、学級委員長なんかやってて、真面目に見える割には度胸あるっていうか」
 「まあ確かに」


 肝が据わってるっていうか。

 納得して委員長を見ると、蒸し鍋定食を食べる手を休め、肩を竦められた。
 うーん。読めない。


 「でなきゃ市川と木崎君に自分から話し掛けるわけないでしょ」


 有坂は委員長に、非難するような声色で言った。


 「どういう意味?」
 「ほら、一学期は親衛隊だの生徒会だので荒れてたでしょ、市川の周り」
 「………あー」


 今は鳴瀬先輩が中心になって親衛隊は落ち着いてるけど、半年前までは強姦だの暴力だのが当たり前な環境だった。


 「そんな市川に話し掛けたら、自分が親衛隊に目付けられるかもしれないし。僕、前の席に座ってるから、いつか言いがかり付けられるんじゃないかって気が気じゃなかったよ」
 「それ俺のせいじゃないんですけど」


 ぷりぷり怒られても。


 「親衛隊が落ち着いても、市川は生徒会役員だし、木崎は風紀だから。下手に話し掛けて妬まれても困る」
 「それに木崎が隣にいるからな」


 理不尽に憤慨する有坂の言葉に重ねるようにして、委員長が言った。


 「木崎?」
 「話し掛けにくいだろ、あいつ」
 「委員長話し掛けてるじゃん」
 「北斗は特別なの。肝が据わってるだけ」


 話し掛けにくい………か。確かに無表情だし、リアクション薄いしなあ。


 「でも木崎いいやつだよ」
 「まあね」
 「その木崎が市川をガードしてる。って、気づいてた?」
 「え?」


 委員長はニッコリ笑って言った。


 「編入したての頃、あのもさい見た目で色々言われてただろ」
 「あぁ」


 ちょっと忘れかけてた。
 確かにクラスのやつにもヒソヒソ言われたけど、あんまり気にしてないというか。時間が解決してくれたというか。


 「クラスの皆も反省してるんだよ。一応」
 「や、俺あんま気にしてないってば」
 「でも木崎が気にしてるんだよ」
 「だから何で木崎、」
 「警戒してるんだろ。また同じことが起こらないように。あいつ、クラスのやつらが市川に近づくのを極力遠ざけてる」


 委員長がクスクス笑い、「笑い事じゃないでしょ」と有坂がぴしゃりとたしなめた。





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