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 翌日の放課後、僕は北校舎一階を歩いていた。その、迎賓室から正反対の位置で、トラブルが発生したからだ。
 何でも穏健派となった西園寺会長の親衛隊に、変わらず過激派の美作副会長親衛隊が因縁をつけたという。とりあえず主犯格の身元を確認し、西園寺会長の親衛隊だという鳴瀬先輩を聴取しておいた。後は迎賓室に持ち帰って資料化し、桐生先輩が必要だと判断した場合は後日再び事実確認を行う。

 しかし久々の学園には、無駄な教室が多い。その分校舎の面積が増え、僕の移動距離が長くなるのだから勘弁してほしい。もういっそ、教室と寮の自室と迎賓室がトライアングル状になっていればいいのにと思う。真ん中にはチョコレートファウンテンが欲しい。往復しがてら、チョコレートの滝にフルーツやマシュマロを浸けるのだ。


 不毛な妄想をしながら歩いていると、科学室の前に来ていた。

 外側の窓から覗くと、中で生徒が数名ずつのグループを組んでいる。部活動といえども真面目に取り組んでいるようだ。実験に忙しなく動いている。
 ふと視界に、江本少年が入った。同じグループの生徒と一つの実験器具を囲み、真剣な表情をしている。


 「――…?」


 あの"靄"は、何だ?


 江本少年の丁度真後ろに、白い影が見える。
 縦長の楕円のようなそれは、ふらふらと移動する。特に何をするでもない、只移動しているのだ。

 靄は科学室内を右往左往、覚束ない様子で移動し、最後に武宮氏の背後で一際大きく揺れ、


 「―――――…」


 消えた。


 すぅと、光に溶けるように消えた。
 科学部の部員たちは実験に熱中しており、気付かない。

 いや、そもそも"僕にしか見えていない"のだろうか?
 あれは、脳がつくり出した幻覚なのか?


 すっと背筋が冷えた。




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