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分析篇
 
 
 迎賓室に戻ると、桐生先輩に早速怒られた。


 「あまり妙な依頼を受けると、妙な事件ばかり舞い込んでくるようになる」


 安請け合いするな、ということだそうだ。
 何でも桐生先輩が一年生の頃、寮で飼っていたハムスターが脱走したと言う生徒の要望を当時の風紀委員長が考えなしに引き受け、その結果、一時期は「便利屋さん」のように働かされたという。


 「よりによって幽霊騒ぎか……オカ研が迎賓室のドアを叩く日も近いな」
 「そんなことはないよ、いいんちょ」


 チカ先輩はヘッドフォンをすぽんと外して言った。


 「事件の真相は簡単だ。部員の狂言さ」


 チカ先輩は、聞き込みに行ったときの様子を桐生先輩、そして晴一に話した。


 「話を聞いたのは五組。そのうち、武宮派が三組で、米倉派が二組だ」


 そこで、メモに書き留めていた各グループの証言を発表した。

 一組目、武宮派。放課後の部室で黒い影と目が合う。大きさは目測二メートルほど。横幅は一メートル五十程度。一学期の終わりに目撃。
 二組目、武宮派。鍵の掛かった部室の中で、黒い影を見る。大きさは目測一メートル弱。横幅はあまりなく、小さい子供のようなシルエット。目撃日時は不明。
 三組目、米倉派。放課後の部室や実験中の教室の隅で、白い影を目撃。ぼんやりとしており、縦長。大きさは推定一メートル七十センチ。数日前の出来事。
 四組目、武宮派。放課後部室に行くと、黒い影を目撃。驚いて固まったところ、すっと消える。大きさの詳細は不明。目撃日時は不明。
 五組目、米倉派。教室の中でもやのようなものを目撃。幻覚かと思い二度見すると、すでに消えていた。大きさは成人男性程度。昨日目撃。


 「さぁ、何か気になることがあれば言ってくれ」


 チカ先輩はメモをテーブルに放り投げ言った。


 「随分その……幽霊とやらがいるものだな」


 最初に口を開いたのは、桐生先輩だった。「幽霊」というものに抵抗があり、これらを霊魂の仕業に決めつけたくないという口ぶりだ。


 「そうだね。いい着眼点だ」
 「それと、武宮派と米倉派、証言がはっきり分かれているのも気になる」
 「さすがいいんちょ。早速ビンゴだよ」


 チカ先輩はにっこりと笑った。
 確かにそれは、僕も気になっていたことだった。


 「武宮派は黒い影を、米倉派は白いもやのようなものを目撃しているね。綺麗に分かれすぎている」




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