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 今までで一番「怖がっている」というのが全面に出た表情だ。武宮氏に怯えているのだろうか。


 「どちらか視た人がいれば」
 「僕……視ました」
 「僕も」


 二人は第一学年の生徒で、僕と同級生だった。
 やはり鍵当番で遅く残っていた日に窓の外から視たり、教室の隅にぼんやりと白い影を視たりしたのだという。


 「それは鍵当番以外でも目撃したということですか」
 「そうだね。隅の方にぼやーっと。見間違いじゃなければ」
 「それより気になったのだけれど」


 チカ先輩が口を開くと、二人の生徒はぴっと身を硬くした。


 「霊の形について詳しく教えてくれるかな」
 「形……ですか?」


 それまで幽霊を信じないと言っていたチカ先輩の発言とは思えなかったが、口出しはせずに黙っていることにした。メモに付け加えるため、ペンの準備をする。


 「形っていうか……もやみたいなものでした」
 「ぼぉっとしていて、縦長いです。怖くてそんな見てなかったけど」
 「大きさとかは」
 「大きさ? 僕の身長より少し高いくらいだと……」
 「ふぅん」


 チカ先輩はやや目を細めて、二人の元から去っていく。
 僕は軽く礼を言い、先輩の後について行った。この気まぐれさは桐生先輩、そして晴一よりも厄介だ。聞きこみに関して、今後チカ先輩と行動を共にしない方がいいだろうと僕は確信した。

 その後、残りの生徒にも同じような質問をランダムにし、最後にチカ先輩は最初の二組――江本少年のグループと、野沢氏のところへ行って、何かを聞いていたようだ。


 「もういいだろう。何かは掴めそうだよ」


 その表情は、随分疲れているように見えた。





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あきゅろす。
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