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二人といると、しょっちゅう喧嘩に巻き込まれた。大抵は「最強」と謳われる二人を潰して、ストリートで名前を馳せたいと思うやつらの急襲だ。
そんなサバイバルな環境で過ごしていると、俺も自然と喧嘩が強くなっていく。でも、なるべく暴力は振るいたくなかった。人を殴るのは止めるときだけ。護るときだけ。黒崎さんと赤峰さんに出会ったのも、その気持ちがきっかけだったから。
基本は平和主義、そんな感じで楽しくやってた。
「――お前が月兎?」
司は突然現れた。
夜の街を締める二大勢力とも言えるチームと関わってた俺は、そこそこ有名人だった。二人と一緒にいないときでも、狙われることはたくさんあった。喧嘩を吹っ掛けられたこともあった。
司は、どこかで゙月兎゙の噂を聞いたのかもしれない。
「――何だよ」
「いや、綺麗だなと思って」
「はぁ? 男に綺麗とか馬鹿かお前」
「マジだって。つーか気に入った」
「は? ………ちょ、おい!」
今も覚えてる、屈辱的な出来事。
初対面で、噛み付くようなキスをされた。
あれは忘れない。忘れたくても忘れられない。
「月兎、俺は――…」
それ以来、司は俺に付きまとうようになった。
街を歩いていても、溜まり場のクラブに行っても、あの赤毛が突然出没する。
「お前が好きだ」
「………キモっ」
「ぁ? 俺様の好意を無下にするなんていい度胸だな」
「近寄んなバカ!!」
この学校に入ることを決めたのは、司から逃げる意味もあったのに。
「………何でいるんだよ」
不良のくせにお坊っちゃまとか。ありえねぇし。似合わないし。
寮に帰って眼鏡を外した。ダテだけど重いからか、目が疲れる。
あいつに正体がバレたら、また付きまとわれる。
そんなの御免だ。嫌がらせも人を馬鹿にするのも、いい加減にしてほしい。
………が、既にめちゃくちゃになってると知ったのは、次の日の話。
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