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米倉先輩は、ぷるぷると震えている。それでも迎賓室を出て行かないのは、やはりその幽霊騒ぎとやらが怖いのだろう。
「チカ先輩」
僕は提案した。
「三日間、取り組んでみませんか。それで無理なら諦めましょう。米倉先輩も、僕たちが三日間掛かって解決出来なければ、諦めて霊の人と仲良くなって下さい」
「ちょっとキサキ君」
「あぁあありがとう!! 恩に切るよ新人君!」
「木崎です」
勿論引き受けたのは、暇つぶしのつもりである。
新学期早々、身体を張って生徒の暴動を抑える気も起きない。それなら体力を消耗しにくそうな幽霊退治の方が楽そうだ。というか、幽霊退治など出来っこないのだから、三日間の娯楽だと思えばいい。
もしも幽霊を風紀委員会に入れることが出来たら、僕の代わりに仕事を任せようと思った。霊を味方につければ、何だか楽しそうである。
「僕は失礼するよ」
そのとき、拉麺を食べ終えたらしい環先輩が椅子から立ち上がった。
「環先輩は参加しないですか」
「しないよ。だってすぐに解決しそうだから」
あまりにもあっさりというものだから、僕は拍子抜けしてしまった。
「行き詰ったときは僕を呼ぶといいよ。すぐに解決だ」
「お前そんなキャラだったか?」
「失礼だな桜庭。一学期のテスト盗難事件は僕が解決したじゃないか」
「えっ!」と驚く米倉先輩の声が聞こえた。あの事件は、表向きは迷宮入りしたということになっている。
「それじゃあ頑張るがいい」
環先輩は颯爽と出て行った。
確かに多くの事件は、環先輩なくして解決には至らないものだった。その先輩が言うのだから、この事件は思ったよりも簡単なのかもしれない。
「さぁ、行きましょうかチカ先輩」
「どこに?」
「科学部の部室です」
まずは霊を視たという部員たちに聞き込みをしなくてはならない。
僕は立ち上がった。
「嫌だよ。晴一を連れて行ってよ」
「絶対行かねぇ」
異常に速く返ってきた答えの主を振り向くと、若干青ざめているように見えた。
「………」
「………」
「………」
やや気まずい空気が流れる。
「………面倒臭いやつら」
チカ先輩がため息を吐いた。
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