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「科学部の部室に、出るそうなんだ」
米倉先輩は頭を抱え唸った。
パフォーマンスが大袈裟な人だ、と思う。
「"視た"というのは殆どの部員だ。化け宮の取り巻きならまだしも、科学部の部員まで……」
「化け宮?」
問い返すと、チカ先輩が「まだやっていたのかい」とため息を吐いた。
「科学部は、名前は理"科"学部なんだけどね。中は化け学との派閥で真っ二つなんだ」
「化け学なんてナンセンスだ。人類の退化だとは思わないかい、風紀君」
「木崎です」
「失礼、木崎君」
「いいから続けてよ」
「あ、あぁ………理科学の部員なら信用出来るんだけどね、化け学の連中とは仲が悪い。僕に嘘を吐いてからかっているかもしれないだろう? でも、理科学の連中まで幽霊だ何だと言い出した。おちおち実験も出来ない」
どうやら米倉先輩は、幽霊が怖いらしい。
しかし話を聞いてみたはいいものの、本当に風紀委員会に相談してもどうしようもない内容であったため、僕は聞いたことを後悔していた。米倉先輩は何を期待して風紀委員会に来たのだろう。そして美作副会長は何故風紀委員会に問題を送りこんできたのだろう。大方愉快犯であることは想像に容易いのだが。
「米倉先輩はどうしたいですか」
これが一番重要な部分だ。
何が望みなのか、どうしてほしいのかが分からないことには、イエスノーの返答すら出来ない。
「幽霊を退治して欲しいんだ……科学コンクールまであと僅かなのに、こんなことで研究を止めるなんて嫌なんだよ」
「幽霊に協力して貰えばいいじゃないですか」
「簡単に言うなあ君は!!!」
僕の発言に逆上した米倉先輩が、勢いよく立ちあがった。
テーブルに置いてあった烏龍茶が零れそうになり、咄嗟の瞬発力でグラスを回収する。
「そんなふざけたことが出来るわけないだろう!?」
「話せばいい人かもしれませんよ。人型ではないかもしれませんけど」
「世にも奇妙な物語」のテーマ曲を口ずさみながら言うと、米倉先輩は怒りのせいかさっと顔を青くした。
「ななな、何なんだ君の後輩は!!」
「キサキ君は委員会の大型新人だよ。怒らせると碌なことがないよ」
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