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 「で、彼は誰ですか?」


 向かい合い、この中で唯一彼の話を聞いていたのではないかと思われるチカ先輩に聞く。
 チカ先輩は眉を寄せ、ストローを軽く噛んだ。


 「科学部部長の米倉くん。第三学年Aクラスだ」


 白衣を着た生徒は、「米倉です」と小さく礼をした。油に浸した入学当初の市川を酢で和えたようなワカメである。

 米倉先輩は憔悴し切ったように、肩をだらんと落としている。何故彼がここにいるのかは分からないが、チカ先輩のそれとはえらい違いだ。もしかしてチカ先輩が、米倉先輩をこの状態まで追いやったのだろうか。
 先輩の隣に座りながら目線を遣ると、「それは誤解だよ」と先に制された。


 「第一ここに来るのが間違っている。僕らは幽霊まで取り締まらなくてはならないのかい?」


 霊?


 「だって美作に相談したら、風紀に行けって………」
 「……ぁんの腹黒狐野郎。環、どうしてくれるんだい」
 「兄貴のことを言われる道理はないぞ!」


 環先輩はナルトを箸で摘まみながら叫んだ。

 桐生先輩は興味が無さそうに、「職員室に行ってくる」と言って迎賓室を出ていった。晴一はキッチンに戻って烏龍茶を淹れているし、環先輩は相変わらず拉麺を啜っている。
 向かいに座るチカ先輩はソファの背に凭れ、暗に「帰れ」と示している。


 「目に見えないものは信じたくないんだ。科学部の部長が恥ずかしくないのかい?」
 「そんなことを言われても、実際に"視た"部員がいるんだ!」
 「大体、僕は君が嫌いだ」
 「頼むよ上ノ宮!!」


 キッチンから晴一が現れ、グラスを持ってくる。
 晴一に背を向けた状態の米倉先輩は、応接セットの机をバン!と叩いた。音に驚いた晴一が止まる。


 「科学部の幽霊を退治してくれ!!」


 僕はストローに運んだ口を止めた。
 なかなか面白そうだと思ったからだ。





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あきゅろす。
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