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「け、喧嘩は良くないと思う………ます」
円満解決を目指そうと、平和主義的提案。タメ語で言いそうになって、無理やり敬語に直した。
しかしそんな俺の気遣いも空しく。
「俺に指図してんじゃねぇ。眼鏡」
司の怒りの矛先は、完全に俺に向いてしまった。
胸倉をぐっと掴まれ、至近距離で睨まれる。うわ、これはマズイ。足が空いてるから蹴りで距離を取ってもいいんだけど、俺は基本的に平和主義。暴力反対。従ってそれは最終手段。
「とりあえず喧嘩やめよーぜ、なっ」
「誰に向かって口訊いてると思ってんだよ」
司の腕に更なる力が入り、首が絞まる。
ちょ、これはヤバい。かもしれない。俺の命と平和ってどっちが大事だろう、とか考えちゃうレベル。
「誰、って………俺様司様に決まってるじゃないです、かっ!!」
「なッ!?」
まあ、俺の命の方が大事だよね。
右足を思いっきり振り上げると、肘の関節にヒットした。
何て言うんだっけ、ファニーボーン? そこを狙ったから、しばらくは腕が痺れて動かないはずだ。
「俺様もいいけどな、誰彼構わず当たってんじゃねえよ。馬鹿」
左肘を押さえる司に言い放つ。
「………てめぇ」
「自分より明らかに力弱い人間に本気出すのかよ。つーか何でも暴力で解決させんな。みっともねぇ」
あぁ……言っちゃったな、と気づいたのは、学食が静まり返っていることに気づいたからだ。
忘れてたけど、こいつは生徒会長で人気者なんだった。そんなやつに蹴り入れて説教して………あ、俺終わった?
「あんま派手にやるなよ、新入生」
いつの間にか出来てた人垣が割れた。
「風紀委員だ」
誰かが囁くと、静まり返った学食にうねりが起きた。
「誰?」
「桜庭先輩だ」
「マジで?」
「ちょっと見えない!」
一気に騒がしくなる生徒たち。
「司も。今回はお前が悪い」
「何でてめぇが出てくんだよ、晴一」
「っせーな。お前こそ当たってんじゃねーよ」
………晴一?
「当たってねーし」
「バカ。あのガキ捕まえてから言え」
アッシュブラウンの髪。彫りの深い目元。
聞き覚えのあるハスキー声。
そこにいたのは紛れもなく、"あの"晴一さんだった。
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