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--03

 
 「け、喧嘩は良くないと思う………ます」


 円満解決を目指そうと、平和主義的提案。タメ語で言いそうになって、無理やり敬語に直した。
 しかしそんな俺の気遣いも空しく。


 「俺に指図してんじゃねぇ。眼鏡」


 司の怒りの矛先は、完全に俺に向いてしまった。

 胸倉をぐっと掴まれ、至近距離で睨まれる。うわ、これはマズイ。足が空いてるから蹴りで距離を取ってもいいんだけど、俺は基本的に平和主義。暴力反対。従ってそれは最終手段。


 「とりあえず喧嘩やめよーぜ、なっ」
 「誰に向かって口訊いてると思ってんだよ」


 司の腕に更なる力が入り、首が絞まる。
 ちょ、これはヤバい。かもしれない。俺の命と平和ってどっちが大事だろう、とか考えちゃうレベル。


 「誰、って………俺様司様に決まってるじゃないです、かっ!!」
 「なッ!?」


 まあ、俺の命の方が大事だよね。

 右足を思いっきり振り上げると、肘の関節にヒットした。
 何て言うんだっけ、ファニーボーン? そこを狙ったから、しばらくは腕が痺れて動かないはずだ。


 「俺様もいいけどな、誰彼構わず当たってんじゃねえよ。馬鹿」


 左肘を押さえる司に言い放つ。


 「………てめぇ」
 「自分より明らかに力弱い人間に本気出すのかよ。つーか何でも暴力で解決させんな。みっともねぇ」


 あぁ……言っちゃったな、と気づいたのは、学食が静まり返っていることに気づいたからだ。
 忘れてたけど、こいつは生徒会長で人気者なんだった。そんなやつに蹴り入れて説教して………あ、俺終わった?


 「あんま派手にやるなよ、新入生」


 いつの間にか出来てた人垣が割れた。

 「風紀委員だ」
 誰かが囁くと、静まり返った学食にうねりが起きた。

 「誰?」
 「桜庭先輩だ」
 「マジで?」
 「ちょっと見えない!」

 一気に騒がしくなる生徒たち。


 「司も。今回はお前が悪い」
 「何でてめぇが出てくんだよ、晴一」
 「っせーな。お前こそ当たってんじゃねーよ」


 ………晴一?


 「当たってねーし」
 「バカ。あのガキ捕まえてから言え」


 アッシュブラウンの髪。彫りの深い目元。
 聞き覚えのあるハスキー声。

 そこにいたのは紛れもなく、"あの"晴一さんだった。




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