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制服のサイズは、俺にぴったりだった。感心する反面、司が用意したんじゃないかと複雑な気持ちになる。ドアの外にいる二人に聞いてみようかとも思ったけれど、怖くて聞けなかった。俺には出来ない。
「あら、似合うわ」
「本当。流石司様のお見立てよねー」
「ねー」
しかしドアを開いた瞬間、俺が聞くまでもなく二人は顔を見合わせ口々に真実を告げる。お洒落だと思ったこの制服を一気に脱ぎたくなった。
「「それではお屋敷の説明に〜」」
二人に連れられて、馬鹿みたいに広い屋敷を一部屋ずつ説明された。
元々本邸だったこの家は今使われておらず、西園寺家の皆様は数年前に六本木のマンションに引っ越したらしい。要するにそれまでは使っていたらしい部屋は、書斎だの寝室だのゲストルームだの………とにかくたくさんある。
「三階はお掃除以外では入らないから安心して」
「一階の間取りと、司様のお部屋を覚えてもらえば大丈夫よぅ」
「「多分ね」」
司の部屋は二階の一番奥。机とベッドがぽつねんと置かれているだけの空間だというのに、かなり広い。ベッドがもう三つは置けそうだ。床は木で出来ていて、歩くたびにボコボコと響く。この音は割と好きだと思った。
いつの間にか司のコロコロカートを持ってた久良さんが、部屋のベッドの横にそれを置いた。
「一日のお仕事は決まってるけど、司様が何かお申し付けされた場合は臨機応変にね」
「近くに私か久良ちゃんがいれば、その旨も伝えてね」
「分かりました」と頷くと、二人は満足げにニッコリと笑った。髪のスタイルや色が違うから見分けが付くものの、顔だけ見れば二人はそっくりだった。
「「それではお仕事に参りましょう〜」」
◆
一日目の仕事は、大掃除だった。
「二年くらいは使ってないから、至るところが煤だらけ」
「まずは司様がお帰りになる前に、天井の埃落としを致しましょう」
天井、なんて言っても吹き抜けの上は果てしない。従って三階の柵から身を乗り出し、とてつもなく長い棒で天井をつつき回す。二年掃除してない、というのはダテじゃなく、大きい埃がワサワサと落ちてきた。目を凝らしてみれば遠くの天井に白いもやのようなものが見えて、背筋がぞっとする。どれだけ掃除してないんだ。
そんなにも汚いから、ちょっとやそっとじゃ終わらない。途中で昼飯の休憩を挟んで、午後からもまた掃除を再開する。
「それから邸内を掃き掃除」
「最後はモップで終了よぉ」
久良さんは途中から夕飯作りに取り掛かり、麗さんは引き続き手すりや額縁を拭き掃除している。
俺は三階から一階まで行ったり来たり、立ち上がったり座ったり。モップがすぐに汚くなるから、一階の水場まで何回もバケツの水を取り替えに行った。クーラーが効いた室内にいても、額に汗が流れる。俺はお洒落な制服を呪った。何でシャツが長袖なんだ。
「晶、終わった?」
モップを専用の器具で絞ってると、後ろから麗さんに声を掛けられた。
「あ、はい! 終わりました」
「御苦労さま。後は久良ちゃんのお手伝いをして、司様をお迎えして、今日のお仕事は終わりよ」
「つーかーれーたーーーー」
その言葉で一気に疲れが放出し、俺はへなへなと屈み込んだ。
働くってこんな大変なんだ。初めて知った。
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